新着論文のうち個人的に「これは…!」と思ったものを毎月5本ほど選んで、備忘録として記録していこうと思います。適宜見返していかないとけっこう忘れているので…。海洋の有機物や微生物な生物地球化学分野がメインです。順不同。
普段はGoogle+で新着論文紹介しています。
Eli K. Moore, Brook L. Nunn, David R.
Goodlett, H. Rodger Harvey
Geochimica
et Cosmochimica Acta, Available online 24 January 2012, In Press
→ベーリング海の沈降粒子・表層堆積物中のメタプロテオミクス。ケイ藻由来タンパク質がメインで、堆積物中では微生物由来タンパク質は少ない。従来研究(アミノ酸の量がよく分析されてきた)ではよく分からなかった「環境中のタンパク質orアミノ酸の由来」を調べるという点では、僕の研究とも目的が共通しており、堆積物のアミノ酸窒素同位体組成の解釈にも役立つ結果。
Bénédicte Ménez, Valerio Pasini & Daniele
Brunelli
Nature
Geoscience (2012) Published online 10 January 2012, doi:10.1038/ngeo1359
→大西洋中央海嶺の蛇紋岩化したカンラン岩のラマン分光有機物分析。ハイドロガーネット付近に有機物が濃集。脂肪族、芳香族、アミド基などの複雑な混合物(タンパク質、脂質、核酸など?)と、熱熟成した有機物。蛇紋岩化の副生成物(水素など)に支えられた海底下地殻生命圏の痕跡?
The effect
of 15N to 14N ratio on nitrification, denitrification and dissimilatory nitrate
reduction
Fiona H. M. Tang, Federico Maggi
Rapid
Communications in Mass Spectrometry, Volume 26, Issue 4, pages 430–442, 29
February 2012
→15Nラベルされた硝酸などで、硝化・脱窒・DNRAなどの代謝速度を定量する際に、15Nが多いと50-60%も代謝速度が落ちてしまうらしい。他の同位体や基質でもありえるので、同位体ラベルを用いた微生物代謝速度推定は再評価が必要かもしれない。生物による同位体組成変動を議論する際によく使われるRayleigh式の代わりに、General
Equations for Biochemical Isotope Kinetics and Fractionation (GEBIK and GEBIF) という数学的枠組(Maggi & Riley 2010, GCA)を用いている。
Benjamin A S Van Mooy, Laura R Hmelo, Laura
E Sofen, Shawn R Campagna, Amanda L May, Sonya T Dyhrman, Abigail Heithoff,
Eric A Webb, Lily Momper and Tracy J Mincer
The
ISME Journal (2012) 6, 422–429; doi:10.1038/ismej.2011.115
→Trichodesmium(貧栄養海域に卓越する窒素固定シアノバクテリア)の有機リン分子からのリン酸同化は、AHLsによるクオラムセンシングで促進されるらしい。一方、AI-2によるクオラムセンシングでは抑制される。海洋サンプルにも、HPLC/MS/MSでこれらのシグナル分子を同定。
Nof Atamna-Ismaeel, Omri Finkel, Fabian
Glaser, Christian von Mering, Julia A. Vorholt, Michal Koblížek, Shimshon
Belkin, Oded Béjà,
Environmental
Microbiology Reports, Article first published online: 16 JAN 2012, DOI:
10.1111/j.1758-2229.2011.00323.x
→陸上植物の葉の上に、プロテオロドプシンに続き、非酸素発生型光合成バクテリアもたくさん見つかった。葉のメタゲノム解析。バクテリアから植物への影響や、陸域生態系のエネルギーフラックスが気になる。