3月は7本をチョイス。更新を忘れていたので4月と同時にup。地殻内溶存有機物、安定同位体プロービング手法、堆積物有機物と鉄、堆積物バクテリアとDアミノ酸、黒の女王仮説、太古代の大気圧、海洋N*とリン無機化。日付順です。
Huei-Ting Lin, James P. Cowen, Eric J.
Olson, Jan P. Amend, Marvin D. Lilley
Geochimica
et Cosmochimica Acta, Available online 5 March 2012
→Juan de Fuca
RidgeのCORK 1301Aで採取された海洋地殻流体の地球化学。新しいシステムで、コンタミ少なく採取できたらしい。硫酸、硫化水素、水素、メタン、DOCなど。熱力学的平衡になってない。リン酸塩が炭素窒素に比べて少なくて、リン制限になっている? DOC濃度は低くて、海洋地殻は海洋DOCのシンクになっている?
P. J. Maxfield, N. Dildar, E. R. C.
Hornibrook, A. W. Stott, R. P. Evershed
Rapid
Communications in Mass Spectrometry, Volume 26, Issue 8, pages 997–1004, 30
April 2012, Article first published online: 7 MAR 2012.
→「Stable isotope
switching」法の提唱。重い同位体の基質の連続投与で生態系のラベルが完了した後に、同位体天然存在度な基質を与えて、各種バイオマーカーの同位体ラベル具合の時系列を追っていくことで、取込・回転・分解がまとめて見られる。なるほどなぁと感心。
Karine Lalonde, Alfonso Mucci, Alexandre
Ouellet & Yves Gélina
Nature
483, 198–200 (08 March 2012) doi:10.1038/nature10855, Published online 07 March
2012.
→土壌有機物の研究で使われていた鉄還元法を海洋堆積物に適用したら、海洋堆積物中の有機物は2割前後が鉄と結合していることがわかった。結合している有機物は比較的13Cと窒素に富んでいて、タンパク質などかも? 海洋堆積物中で有機物が保存・埋没していくメカニズムやその制御要因は、いくつも説があって昔から謎が多かったが、鉄の役割がかなり大きそうということで、有機地球化学的にかなり重要な論文。陸域の研究と海洋の研究とをつなぐことの重要性も示している。
Bente Aa. Lomstein, Alice T. Langerhuus,
Steven D’Hondt, Bo B. Jørgensen & Arthur J. Spivack
Nature
484, 101–104 (05 April 2012) doi:10.1038/nature10905, Published online 18 March
2012.
→ODP Leg.201で掘削されたペルー沖堆積物のアミノ酸D/L比などから、堆積物中微生物の代謝速度や回転時間を見積もり。が、アミノ酸D/Lモデルに使っている、アミノ酸のラセミ化速度定数や微生物中アミノ酸D/L比などの仮定には「ホントか?」と首を傾げてしまう。
J. Jeffrey Morris, Richard E. Lenski, and
Erik R. Zinser
23
March 2012 mBio vol. 3 no. 2 e00036-12, doi: 10.1128/mBio.00036-12
→海洋の微生物プランクトン(ProchlorococcusやPelagibacterなどの優占種を含む)でゲノムが縮小している現象の説明として、「黒の女王仮説」を提唱。コストのかかる代謝機能の遺伝子を失い、他の微生物に押し付けることが進化の上で有利になる? 名前がかっこいい(トランプゲームのHeartsに由来するとのこと)。
Sanjoy M. Som, David C. Catling, Jelte P.
Harnmeijer, Peter M. Polivka & Roger Buick
Nature
(2012) doi:10.1038/nature10890, Published online 28 March 2012.
→27億年前の雨の痕跡から大気圧を復元すると、現在の2倍よりは小さく、現在と同じくらい以下である可能性が高いらしい。大気窒素が2倍あれば、pressure broadeningによる温室効果増幅で「暗い太陽のパラドックス」も説明が可能だけど、ちと厳しいか? 「海洋堆積物の窒素埋没によって大気窒素量は減ってきている」説(Goldblatt
et al. 2009)が最近気になっていたので、ちょっと残念。高濃度の二酸化炭素による高温な気候の可能性も否定される。
Monteiro, F. M. and M. J. Follows
Geophys.
Res. Lett., 39, L06607, published 30 March 2012, doi:10.1029/2012GL050897.
→北大西洋N*(硝酸塩とリン酸塩のレッドフィールド比からのズレ)の分布に、有機リンの優先的な無機化がかなり効いている可能性。もしそうなら、N*による窒素固定速度推定は3倍ほど過小評価かも?