4月は5本。鉱物光触媒栄養生物、同位体立体異性体分析、化学合成共生メタプロテオミクス、アミノ酸分子レベル放射性炭素年代測定、陸域花崗岩生命圏。
Anhuai Lu et al.
Nature
Communications 3, Article number: 768 doi:10.1038/ncomms1768, Published 03
April 2012.
→太陽光が半導体鉱物(ルチル、スファレライト、ゲーサイトなど)に当たって化学エネルギーに変換され、非光栄養生物(化学合成独立栄養や従属栄養)の成長を促進するらしい。純粋培養と天然土壌微生物群集の両方で確認。新たなエネルギーの流れの可能性として興味深い。還元的な初期地球では硫化物が、酸化的大気では鉄/マンガン酸化物が使えた? 詳しい生化学的なメカニズムはまだ不明らしい。
Philippe Lesot and Olivier Lafon
Anal.
Chem., DOI: 10.1021/ac300667n, Publication Date (Web): April 16, 2012
→有機分子の2H-13C同位体置換立体異性体を、多核NMRを用いて天然存在度レベル分析に初めて成功。まだ現状では100mgスケールと大量の物質が分析に必要なものの、技術が進歩して感度が上がれば、将来的には天然の物質にも適用可能になるかも? どんな情報を持っているんだろうな…。
Manuel Kleiner et al.
PNAS,
Published online before print April 18, 2012, doi: 10.1073/pnas.1121198109
→5種類の化学合成バクテリアを共生させる海洋堆積物ゴカイOlavius algarvensisのメタプロテオミクスとメタボロミクス。メタゲノムは2006年に読まれていたけど(Woyke
et al. 2006)、謎が多かった。一酸化炭素酸化、水素酸化、ホスト廃棄物リサイクルなど、ゲノムでは見えなかった代謝経路がたくさん見えていて興味深い。
Anat Marom et al.
PNAS,
Published online before print April 18, 2012, doi: 10.1073/pnas.1116328109
→人骨化石中コラーゲンからアミノ酸(ヒドロキシプロリン)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で単離して、放射性炭素年代測定。ロシアの化石人骨に適用したら、バルク(4-16ka)よりもかなり古い値(33ka)になった。他のアミノ酸でも分析できるようになると、海洋などへの生物地球化学的応用も楽しみになるけど、さて。
Karsten Pedersen
FEMS
Microbiology Ecology, Article first published online: 19 APR 2012, DOI:
10.1111/j.1574-6941.2012.01370.x
→スウェーデンの地下450mの花崗岩中地下水の微生物を、現場圧力を保持したまま、水素や酢酸を添加した時の応答を調べた。「生態系全体の代謝速度は遅いけど、微生物細胞あたりの代謝ポテンシャルはかなり高い」という一見矛盾した結果に対して、ウイルスによる微生物の死滅が原因という仮説を議論している。実際にこのサイトでは、微生物細胞数より一桁多いウイルス数が報告されているので(Kyle et
al. 2008)、どうも確からしい気がする。