2009年11月29日日曜日

地球化学関東若手セミナー第2回(12/27)

「地球化学関東若手セミナー」の第2回を、
12月27日に東大海洋研で開催します。
今回からは、2人ぐらいが長めの時間で、
レビュー・イントロをメインに発表する形式です。
興味のある方は、ぜひぜひご参加ください。

日時: 12月27日(日) 15:00-
場所: 東京大学海洋研究所 A棟1F大講義室
アクセス: http://www.ori.u-tokyo.ac.jp/about/j/map.html
(門正面の5階建ての建物(A棟)の、正面玄関から入って左奥の教室)

【プログラム】
15:00-16:00
内藤 裕一
東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻 D1
「考古学試料に対する有機分子レベル同位体分析の応用:現状と展望」

16:10-17:10
山崎 絵里香
東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻 D1
「スズ同位体を用いた地球化学・考古学」

17:20-18:00 総合討論
18:00- 懇親会

2009年11月24日火曜日

科学ニュース(091116-091122)

Origin of Life: Generating RNA Molecules in Water
ScienceDaily (Nov. 20, 2009)
→環状ヌクレオチドが40-90℃のお湯に入れておくだけで、100個以上が連なる鎖(RNA)ができた。生命の起源にヒント? Journal of Biological Chemistryに論文。

Early Volcanoes Minted Nickel
ScienceNOW Daily News, 20 November 2009
→硫黄と鉄の同位体分析から、始生代のコマチアイトに関連した鉄・ニッケル硫化物鉱床における硫黄の源は、主に大気に由来することが分かった。Scienceに論文。

Planetary Science: Yes, There's Ice on the Moon—But How Much, and What Use Is It?
Science News of the week, 20 November 2009
→LCROSSの月面衝突実験で大量の水が見つかった話で、特に今後の展開について。

Astrophysics: Galactic Glare Reveals Birthplace of Cosmic Rays
Science News of the week, 20 November 2009
→銀河宇宙線を加速する場所が、星の爆発であることが確かめられた。Nature電子版とScienceに論文。

Paleontologists Find Extinction Rates Higher in Open-Ocean Settings During Mass Extinctions
ScienceDaily (Nov. 20, 2009)
→3大大量絶滅(P/T、Tr/J、K/T)は、浅海に生息する生命体よりも、外洋に面する沿岸に生息する生命体に大きな影響を与えたらしい。Scienceに論文。

Oceans' Uptake of Human-Made Carbon May Be Slowing
ScienceDaily (Nov. 19, 2009)
→海洋の観測データから計算で、海洋による人為起源CO2の吸収の履歴を復元。吸収量は1950年代以降に急速に増加しており、最近の数十年間は増加速度が少し低下していることが示された。Natureに論文。

Palaeoclimate: Kink in the thermometer
Nature News & Views, 18 November 2009
Antarctic temperature spike surprises climate researchers
Natue News, 18 November 2009
→東南極の氷の同位体組成は温暖期における気温変化に対して感度が低いらしいことが分かった。間氷期の気候のこれまでの気温の見積もりは低すぎたようだ。南極の間氷期の最高気温が、現在の気温よりも少なくとも6K高く、広く引用される3±1.5Kの約2倍であったらしい。Natureに論文。

Japanese science faces deep cuts
Nature News, 17 November 2009
Japan: Belt-Tightening Could Claim Some Scientific Scalps
Science News of the week, 20 November 2009
Japan's Scientists Fight Proposed Budget Cuts
Science Incider, 20 November 2009
→基礎科学予算に対する事業仕分けについて。日本の報道はほとんどスパコンが占めているが、ここではIODPやIFREEなども取り上げられている。

新しい論文(091116-091122)

☆Nature☆

Evidence for warmer interglacials in East Antarctic ice cores
L. C. Sime, E. W. Wolff, K. I. C. Oliver & J. C. Tindall
Nature 462, 342-345 (19 November 2009) doi:10.1038/nature08564
→340kyrの3つの東南極氷床コア記録を、GCMモデリングからの入力と比べて分析すると、東南極の氷の同位体組成は温暖期における気温変化に対して感度が低いらしいことが分かった。間氷期の気候のこれまでの気温の見積もりは低すぎたようだ。南極の間氷期の最高気温が、現在の気温よりも少なくとも6K高く、広く引用される3±1.5Kの約2倍であったらしい。ひえー。
【最新論文(Nature, Science)】

Reconstruction of the history of anthropogenic CO2 concentrations in the ocean
S. Khatiwala, F. Primeau & T. Hall
Nature 462, 346-349 (19 November 2009) doi:10.1038/nature08526
→海洋の観測データから計算で、海洋による人為起源CO2の吸収の履歴を復元。吸収量は1950年代以降に急速に増加しており、最近の数十年間は増加速度が少し低下していることが示された。2008年の人為起源CO 2 の貯蓄量は140±25PgCであり、吸収速度は2.3±0.6Pg C/yrらしい。
【最新論文(Nature, Science)】


☆Science☆

Atmospheric Sulfur in Archean Komatiite-Hosted Nickel Deposits
Andrey Bekker, Mark E. Barley, Marco L. Fiorentini, Olivier J. Rouxel, Douglas Rumble, and Stephen W. Beresford
Science 20 November 2009: Vol. 326. no. 5956, pp. 1086 - 1089, DOI: 10.1126/science.1177742
→硫黄と鉄の同位体分析から、始生代のコマチアイトに関連した鉄・ニッケル硫化物鉱床における硫黄の源は、主に大気に由来することが分かった。
【最新論文(Nature, Science)】

Geophysical Detection of Relict Metasomatism from an Archean (~3.5 Ga) Subduction Zone
Chin-Wu Chen, Stephane Rondenay, Rob. L. Evans, and David B. Snyder
Science 20 November 2009: Vol. 326. no. 5956, pp. 1089 - 1091, DOI: 10.1126/science.1178477
→カナダのスレイブ・クラトンの地震波探査により、始生代におけるクラトン形成の原因は沈み込みであることが示唆された。つまり、プレートテクトニクスは35億年前には既にあった?
【最新論文(Nature, Science)】

Microsecond Simulations of Spontaneous Methane Hydrate Nucleation and Growth
Matthew R. Walsh, Carolyn A. Koh, E. Dendy Sloan, Amadeu K. Sum, and David T. Wu
Science 20 November 2009: Vol. 326. no. 5956, pp. 1095 - 1098, DOI: 10.1126/science.1174010
→氷にメタンが取り込まれ、最終的に2種類の結晶構造の混合物となる複雑なメタン水和物形成過程のシミュレーションが成功した。
【最新論文(Nature, Science)】

Aragonite Undersaturation in the Arctic Ocean: Effects of Ocean Acidification and Sea Ice Melt
Michiyo Yamamoto-Kawai, Fiona A. McLaughlin, Eddy C. Carmack, Shigeto Nishino, and Koji Shimada
Science 20 November 2009: Vol. 326. no. 5956, pp. 1098 - 1100, DOI: 10.1126/science.1174190
→カナダ海盆の表層海水は2008年時点でアラゴナイトに対して未飽和であった。これは予測よりかなり早い。人為起源二酸化炭素の増加に伴う海洋の酸性化に加えて近年の北極海での急激な海氷減少(融解)による影響で起きたらしい。JAMSTECからプレスリリース。
【最新論文(Nature, Science)】

Epicontinental Seas Versus Open-Ocean Settings: The Kinetics of Mass Extinction and Origination
Arnold I. Miller and Michael Foote
Science 20 November 2009: Vol. 326. no. 5956, pp. 1106 - 1109, DOI: 10.1126/science.1180061
→3大大量絶滅(P/T、Tr/J、K/T)は、浅海に生息する生命体よりも、外洋に面する沿岸に生息する生命体に大きな影響を与えたらしい。
【最新論文(Nature, Science)】

Symbiotic Nitrogen Fixation in the Fungus Gardens of Leaf-Cutter Ants
Adrian A. Pinto-Tomas, Mark A. Anderson, Garret Suen, David M. Stevenson, Fiona S. T. Chu, W. Wallace Cleland, Paul J. Weimer, and Cameron R. Currie
Science 20 November 2009: Vol. 326. no. 5956, pp. 1120 - 1123, DOI: 10.1126/science.1173036
→アセチレン還元法や15-N2ラベル実験から、ハキリアリは窒素固定細菌と相利共生していることが分かった。亜熱帯生態系における意外な窒素ソース。
【最新論文(Nature, Science)】


☆Proceedings of the National Academy of Sciences☆

Sodium shortage as a constraint on the carbon cycle in an inland tropical rainforest
Michael Kaspari, Stephen P. Yanoviak, Robert Dudley, May Yuan, and Natalie A. Clay
PNAS 2009 106:19405-19409; published online November 2, 2009, doi:10.1073/pnas.0906448106
→内陸の熱帯雨林では、ナトリウムが有機物分解の制限因子になっているらしく、炭素循環に重要。
【最新論文(地球科学系)】

Nitrogen recycling and nutritional provisioning by Blattabacterium, the cockroach endosymbiont
Zakee L. Sabree, Srinivas Kambhampati, and Nancy A. Moran
PNAS 2009 106:19521-19526; published online before print October 30, 2009, doi:10.1073/pnas.0907504106
→ゴキブリの体内共生細菌、Blattabacteriumのゲノムを解析した結果、この細菌はゴキブリの体の老廃物窒素を、アミノ酸やビタミンに変換していることが明らかになった。細菌たちのおかげで、ゴキブリは排尿する必要さえないという。ゴキブリすごいな。。。
【最新論文(生物系)】


☆Applied and Environmental Microbiology☆

CO Dehydrogenase Genes Found in Metagenomic Fosmid Clones from the Deep Mediterranean Sea
Ana-Belen Martin-Cuadrado, Rohit Ghai, Aitor Gonzaga, and Francisco Rodriguez-Valera
Applied and Environmental Microbiology, December 2009, p. 7436-7444, Vol. 75, No. 23, doi:10.1128/AEM.01283-09
→地中海深海のメタゲノムデータに、一酸化炭素代謝の鍵酵素の遺伝子が見つかった。現場の一酸化炭素の濃度や起源などは分からないらしいが、地熱由来?
【最新論文(生物系)】

Phylogenetic Diversity and Metabolic Potential Revealed in a Glacier Ice Metagenome
Carola Simon, Arnim Wiezer, Axel W. Strittmatter and Rolf Daniel
Applied and Environmental Microbiology, December 2009, p. 7519-7526, Vol. 75, No. 23, doi:10.1128/AEM.00946-09
→ドイツの氷河のメタゲノム解析から、系統的多様性・代謝ポテンシャルを調べた。
【最新論文(生物系)】

Distribution and Diversity of Archaeal and Bacterial Ammonia Oxidizers in Salt Marsh Sediments
Nicole S. Moin, Katelyn A. Nelson, Alexander Bush, and Anne E. Bernhard
Applied and Environmental Microbiology, December 2009, p. 7461-7468, Vol. 75, No. 23, doi:10.1128/AEM.01001-09
→ニューイングランドのsalt march堆積物で、アンモニア酸化バクテリア・アーキアの分布・多様性を調べた。アーキアたくさんいるらしい。
【最新論文(生物系)】

2009年11月20日金曜日

第8回ニューイヤースクールのお知らせ

今年度から、毎年年初に開催される
「地球システム・地球進化ニューイヤースクール」の
事務局に参加しています。
第8回の参加者を募っていますので、ここでも宣伝。
代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで、
2010年1月9-10日に開催されます。

今年のテーマは「地球を旅する水の科学」。
なかなか豪華な講師陣が揃ったのではないでしょうか。
皆様、ぜひぜひご参加ください。
詳細はこちら。参加登録はこちら

ちなみに僕は、鍵先生と泊さんの担当と
レクチャーノート編集担当をやっています。

<プログラム>(敬称略、タイトルは変更の可能性あり)
2010年1月9日(土)
10:00~ 受付開始
10:30~ 講演開始
【通常講義】
・惑星の水
杉田 精司 教授(東京大学大学院・新領域創成科学研究科・複雑理工学専攻)
「火星探査が明かす火星表層環境の初期進化」
・固体地球深部の水
鍵 裕之 准教授(東京大学大学院・理学系研究科・地殻化学実験施設)
「光と中性子で探る、地球深部物質中の水の正体」
・熱水と生命
浦辺 徹郎 教授(東京大学 大学院理学系研究科)
「(仮)化学地質学・鉱床学・海底熱水活動・微生物圏地圏相互作用」

【Ex レクチャー】 
須藤 斎 助教(名古屋大学大学院・環境学研究科)
「子供向けの本を書く ~わかりやすく研究を伝える~」
大木聖子 助教(東京大学・地震研究所・アウトリーチ推進室)
「地球科学研究者のLiberal Arts」

15:50~ グループワークによる議論
18:00~20:00 懇親会

1月10日(日)
09:00~ 講演開始
【通常レクチャー】
・水と災害
後藤 和久 助教(東北大学大学院・工学研究科・附属災害制御研究センター)
「沿岸巨礫群‐堆積学のラストフロンティアから挑む沿岸波浪災害‐」
・現代の海洋・大気循環
小橋 史明 准教授(東京海洋大学 海洋工学部)
「北太平洋の表層循環と大気海洋相互作用」
・過去の氷床・気候変動
川村 賢二 助教(国立極地研究所・研究教育系気水圏研究グループ)
「(仮)氷床コア気体分析、古気候・古環境復元」

【Ex レクチャー】
萩谷 宏 准教授(東京都市大学 知識工学部 自然科学科 )
「自然科学科の立ち上げ -いまこそ博物学の時代をつくろう」
千葉達朗 氏(アジア航測株式会社プロジェクト推進室技師長 理事・フェロー)
「赤色立体地図とは~一枚で立体的に見える地形表現法の発想~」
泊 次郎 博士(東京大学・地震研究所・研究生)
「科学記者から地球科学史研究へ」

15:10~ グループワークによる議論
17:10 閉会挨拶

2009年11月17日火曜日

新しい論文(091109-091115)

☆Nature☆

Enhanced lithium depletion in Sun-like stars with orbiting planetsGarik Israelian, Elisa Delgado Mena, Nuno C. Santos, Sergio G. Sousa, Michel Mayor, Stephane Udry, Carolina Domínguez Cerdeña, Rafael Rebolo & Sofia Randich
Nature 462, 189-191 (12 November 2009) doi:10.1038/nature08483→惑星を有する恒星には、原始リチウム量の1%以下しか存在していないのに対して、惑星が発見されていない太陽類似星の約50%には、平均的に10倍以上の量のリチウムが存在していることがわかった。リチウム枯渇が系外惑星探索に有用なツールになる?
【最新論文(Nature, Science)】

Oxygen and hydrogen isotope evidence for a temperate climate 3.42 billion years ago
M. T. Hren, M. M. Tice & C. P. Chamberlain
Nature 462, 205-208 (12 November 2009) doi:10.1038/nature08518
→34.2億年前のチャートの酸素・水素同位体の分析によると、古始生代の海洋が、現代の海洋に比べて同位体が枯渇しており、これまでに酸素同位体だけから見積もられてきた海水温(55-85℃)よりもずっと低温で40℃以下だったらしい。
【先カンブリア紀2】


☆Science☆
Global Observations of the Interstellar Interaction from the Interstellar Boundary Explorer (IBEX)
D. J. McComas, F. Allegrini, P. Bochsler, M. Bzowski, E. R. Christian, G. B. Crew, R. DeMajistre, H. Fahr, H. Fichtner, P. C. Frisch, H. O. Funsten, S. A. Fuselier, G. Gloeckler, M. Gruntman, J. Heerikhuisen, V. Izmodenov, P. Janzen, P. Knappenberger, S. Krimigis, H. Kucharek, M. Lee, G. Livadiotis, S. Livi, R. J. MacDowall, D. Mitchell, E. Mobius, T. Moore, N. V. Pogorelov, D. Reisenfeld, E. Roelof, L. Saul, N. A. Schwadron, P. W. Valek, R. Vanderspek, P. Wurz, and G. P. Zank
Science 13 November 2009: Vol. 326. no. 5955, pp. 959 - 962, DOI: 10.1126/science.1180906ほか論文5本
→最近打ち上げられた太陽圏観測衛星(IBEX)により、太陽圏と星間物質との相互作用に関する驚くべき特徴(太陽風と近傍の星間物質とが相互作用する領域の大規模構造)が明らかになった。つまり、太陽系外の銀河環境が太陽圏に大きな影響を与える。宇宙線とか。
【最新論文(Nature, Science)】

Partitioning Recent Greenland Mass Loss
Michiel van den Broeke, Jonathan Bamber, Janneke Ettema, Eric Rignot, Ernst Schrama, Willem Jan van de Berg, Erik van Meijgaard, Isabella Velicogna, and Bert Wouters
Science 13 November 2009: Vol. 326. no. 5955, pp. 984 - 986, DOI: 10.1126/science.1178176→グリーンランド氷床の質量減少に寄与する主な区分について定量化が実現した。質量損失の計算に2つの異なる手法(表面質量収支・氷の流出量とGRACE衛星重力データ利用)を用いて一致した。
【最新論文(Nature, Science)】


☆Nature Geosciences☆
Nitrogen-enhanced greenhouse warming on early EarthColin Goldblatt, Mark W. Claire, Timothy M. Lenton, Adrian J. Matthews, Andrew J. Watson & Kevin J. Zahnle
Nature Geoscience, Published online: 15 November 2009 doi:10.1038/ngeo692
→「暗い太陽のパラドックス」を解決する手段として、大気窒素ガス分圧が高かったことを提唱。現在の2倍と見積もってモデル計算すると、温室効果ガスの吸収幅を広げる効果により、4.4℃の温室効果が得られた。現在は、地殻やマントルに入っているらしい。
【先カンブリア紀2】

A seafloor microbial biome hosted within incipient ferromanganese crustsA. S. Templeton, E. J. Knowles, D. L. Eldridge, B. W. Arey, A. C. Dohnalkova, S. M. Webb, B. E. Bailey, B. M. Tebo & H. Staudigel
Nature Geoscience, Published online: 15 November 2009 doi:10.1038/ngeo696
→「海底火山岩に巣食う微生物のエネルギー源が、海水中成分の酸化による」という仮説をテストするため、シンクロトンX線で分析。岩(玄武岩)の溶解は少なく、海水からのFe(III)、Mn(IV)酸化物の沈着が見られたので、やはり海水中成分(地殻流体起源?)の酸化がエネルギー源らしい。
【地下生物圏2】


☆Global Biogeochemical Cycles☆

Carbon and hydrogen isotopic composition of methane over the last 1000 yearsMischler, J. A., T. A. Sowers, R. B. Alley, M. Battle, J. R. McConnell, L. Mitchell, T. Popp, E. Sofen, and M. K. Spencer
Global Biogeochem. Cycles, published 13 November 2009, 23, GB4024, doi:10.1029/2009GB003460.→南極氷床コアのメタンの炭素・水素同位体組成を、過去1000年分を分析。産業革命前から人間活動の影響が見られるらしい。バイオマス燃焼による寄与は減ってきて、農業由来の寄与が増加。
【最新論文(地球科学系)】


☆Geobiology☆

Analysis of hopanes and steranes in single oil-bearing fluid inclusions using time-of-flight secondary ion mass spectrometry (ToF-SIMS)S. SILJESTRÖM, J. LAUSMAA, P. SJÖVALL, C. BROMAN, V. THIEL AND T. HODE
Geobiology, Published Online: 11 Nov 2009, DOI:10.1111/j.1472-4669.2009.00223.x→堆積岩中の、石油を含む流体包有物の1個1個(直径15-30um、ピコリットル)を、TOF-SIMSで分析し、ホパンやステランを検出。
【最新論文(地球科学系)】


☆Organic Geochemistry☆
Molecular signature of the Neoproterozoic Acraman impact event
Hallmann, C.O.E., Grey, K., Webster, L.J., McKirdy, D.M., Grice, K.,
Organic Geochemistry (2009), Available online 11 November 2009, doi: 10.1016/j.orggeochem.2009.11.007→エディアカラ紀のAcraman衝突イベントで形成された堆積物を分析すると、PAH(コロネン)を大量に検出。炭素同位体組成の負のエクスカーションと一致することから、衝突イベントでバイオマス燃焼した?
【最新論文(地球科学系)】

科学ニュース(091109-091115)

Keeping the young Earth cosy
Nature News, 15 November 2009
→太古代の気温を保持していたのは、大気中の窒素ガスの分圧だった? Nature Geoscienceに論文。

The Moon Is Wet!
ScienceNOW Daily News, 13 November 2009
Lunar impact tosses up water and stranger stuff
Nature News, 13 November 2009
→LCROSSの月面衝突実験で、大量の水が検出された。NASAが発表。

Ocean Science: Photosynthesis in the Open Ocean
Science Perspectives, 13 November 2009
→外洋では、強い光と少ない栄養分に適応するため、光合成でPTOXを使った代謝が回り始め、CO2固定とO2発生が必ずしも一緒になっていない。シアノバクテリアにも、真核藻類にもある。これは重要そうな雰囲気なので、ちゃんと調べてみようかな。

Two Earth-sized Bodies With Oxygen Rich Atmospheres Found, But They're Stars Not Planets
ScienceDaily (Nov. 12, 2009)
→地球の2倍のサイズで酸素大気を持つ星が見つかったが、残念ながら惑星ではなく白色矮星。Science電子版に論文。

How Much Water Does The Ocean Have?
ScienceDaily (Nov. 12, 2009)
→海水の量の変動を見積もることに初めて成功。気候モデル改善に重要らしい。Journal of Geophysical Researchに論文。

Earth's Early Ocean Cooled More Than A Billion Years Earlier Than Thought
ScienceDaily (Nov. 11, 2009)
→34.2億年前のチャートの酸素・水素同位体の分析によると、古始生代の海洋が、現代の海洋に比べて同位体が枯渇しており、これまでに酸素同位体だけから見積もられてきた海水温(55-85℃)よりもずっと低温で40℃以下だったらしい。Natureに論文。

Lithium loss may be the planet-hunter's gain
Nature News, 11 November 2009
Astrophysics: A fossil record for exoplanets
Nature News & Views, 11 November 2009
Exoplanets Clue To Sun's Curious Chemistry
ScienceDaily (Nov. 11, 2009)
→惑星を有する恒星には、原始リチウム量の1%以下しか存在していないのに対して、惑星が発見されていない太陽類似星の約50%には、平均的に10倍以上の量のリチウムが存在していることがわかった。リチウム枯渇が系外惑星探索に有用なツールになる? Natureに論文。

Are Earth's Oceans Made Of Extraterrestrial Material?
ScienceDaily (Nov. 11, 2009)
→地球型惑星は基本的に乾燥しており、水を含んだ物質の集積を通して初めて揮発性元素を獲得したらしい。Natureに論文。

Controversial New Climate Change Data: Is Earth's Capacity To Absorb CO2 Much Greater Than Expected?
ScienceDaily (Nov. 11, 2009)
→陸域と海洋による二酸化炭素吸収量は従来推定より大きくて、吸収スピードは1850年から変わっていない? Geophysical Research Lettersに論文。

Antarctica Glacier Retreat Creates New Carbon Dioxide Store; Has Beneficial Impact On Climate Change
ScienceDaily (Nov. 10, 2009)
→南極半島で氷床が融けたことで、植物プランクトンが大発生するようになり、二酸化炭素のシンクになっているらしい。Global Change Biologyに論文。

Nitrogen Loss Threatens Desert Plant Life, Study Shows
ScienceDaily (Nov. 9, 2009)
→50℃以上になる砂漠表面では、窒素化合物が無機的に反応してガス化して失われているらしい(従来は微生物による代謝が主に行うとされた)。Scienceに論文。

Mars rover plans its escape
Nature News, 5 November 2009
→火星ローバーSpiritが、火星土壌に足を取られて6カ月経つが、脱出を試みるらしい。

2009年11月12日木曜日

集めた論文の覚書 [アルカリ度と有機物] Literature Review [Alkalinity & organic matter]

11/4の海洋研の地球環境セミナーで、10/20に見つけた論文(Kim and Lee, 2009)を紹介するために読んだ論文リスト。

セミナーには炭酸塩を研究している人が多いので、「炭酸系化学と有機地球化学の接点」というテーマで選んだ論文でしたが、そもそもアルカリ度が何たるかを分かっていなかったので、結構苦労しました。その分、海洋の炭酸系化学の基礎が、今更ですが分かってきた気がします。


Estimating the contribution of organic bases from microalgae to the titration alkalinity in coastal seawaters
J. Martín Hernández-Ayon, Alberto Zirino, A. G. Dickson Tania Camiro-Vargas & Valenzuela, E.
Limnol. Oceanogr. Methods, 2007, Vol.5, 225-23
→海生大型藻類を培養して、海水アルカリ度に関して、滴定による測定値と、他のパラメータからの計算値を比較すると、培養日数とともに差が拡大(最大で約800umol/kg!)。有機塩基のせい? 沿岸域の海水でも、測定値と計算値に有意な差あり(約50-200 umol/kg)。

Estimating the organic acid contribution to coastal seawater alkalinity by potentiometric titrations in a closed cell
François L.L. Muller, and Bjørn Bleie
Analytica Chimica Acta, Volume 619, Issue 2, 7 July 2008, Pages 183-191, doi:10.1016/j.aca.2008.05.018
→ノルウェーのフィヨルドで、滴定による海水アルカリ度測定値と、他のパラメータからの計算値を比較し、“有機物アルカリ度”を見積もり。むしろ、DOMのダイナミクス解明に役立つ?

Contribution of phytoplankton and bacterial cells to the measured alkalinity of seawater
Kim, Hyun-Cheol, Kitack Lee, and Wonyong Choi
Limnol. Oceanogr., 51(1), 2006, 331-338
→粒子状有機物(POM;植物プランクトンやバクテリアの細胞など)が、海水の全アルカリ度に、多少寄与しているかも。

Calcium carbonate budget in the Atlantic Ocean based on water column inorganic carbon chemistry
Chung, S.-N., K. Lee, R. A. Feely, C. L. Sabine, F. J. Millero, R. Wanninkhof, J. L. Bullister, R. M. Key, and T.-H. Peng
Global Biogeochem. Cycles (2003) 17(4), 1093, doi:10.1029/2002GB002001.
→大西洋における炭酸塩の溶解度のbasinスケール分布を、海水アルカリ度の変化から推定。炭酸塩生産量の31%にあたる、年間11.1×10^12molCが溶解しているようだ。

An updated anthropogenic CO2 inventory in the Atlantic Ocean
K. Lee, S.-D. Choi, G.-H. Park, R. Wanninkhof, T.-H. Peng, R. M. Key, C. L. Sabine, R. A. Feely, J. L. Bullister, F. J. Millero, and Alex Kozyr
Global Biogeochem. Cycles (2003) 17(4), 1116, doi:10.1029/2003GB002067.
→海水のDICとアルカリ度などから、Gruber et al. (1996)で導入された複雑な計算を介して、人為起源CO2が大西洋海水に溶けている量を推定。太平洋・インド洋のデータも合わせると、産業革命以後、海は人為起源CO2の29%にあたる112±17PgCを吸収したらしい。

Impact of Anthropogenic CO2 on the CaCO3 System in the Oceans
Richard A. Feely, Christopher L. Sabine, Kitack Lee, Will Berelson, Joanie Kleypas, Victoria J. Fabry, and Frank J. Millero
Science 16 July 2004: 362-366. DOI: 10.1126/science.1097329
→上記のChung et al. (2003)の全球まとめ版。海洋全体で、0.5±0.2PgCのCaCO3(エクスポート生産の45-65%にあたる)が溶解しているらしい。

The Oceanic Sink for Anthropogenic CO2
Christopher L. Sabine, Richard A. Feely, Nicolas Gruber, Robert M. Key, Kitack Lee, John L. Bullister, Rik Wanninkhof, C. S. Wong, Douglas W. R. Wallace, Bronte Tilbrook, Frank J. Millero, Tsung-Hung Peng, Alexander Kozyr, Tsueno Ono, and Aida F. Rios
Science 16 July 2004: 367-371. DOI: 10.1126/science.1097403
→上記のLee et al. (2003)の全球まとめ版。

Oceanography: Anthropogenic carbon and ocean pH
Ken Caldeira & Michael E. Wickett
Nature, 425, 365 (25 September 2003) doi:10.1038/425365a
→海洋GCMで未来の人為起源CO2が、海洋pHに与える影響を計算。pHが0.7も下がるかもしれない。過去3億年間で未経験の大事件になるかもしれない。

Ocean model predictions of chemistry changes from carbon dioxide emissions to the atmosphere and ocean
Caldeira, K., and M. E. Wickett
J. Geophys. Res. (2005) 110, C09S04, doi:10.1029/2004JC002671.
→上記Caldeira & Wickett (2003)の詳細版。pHや炭酸塩補償深度の緯度・深度分布の、人為起源CO2による変化を、海洋GCMで計算。産業革命前と現代の計算に用いた元データは、下記のKey et al. (2004)。

A global ocean carbon climatology: Results from Global Data Analysis Project (GLODAP)
Key, R. M., A. Kozyr, C. L. Sabine, K. Lee, R. Wanninkhof, J. L. Bullister, R. A. Feely, F. J. Millero, C. Mordy, and T.-H. Peng
Global Biogeochem. Cycles (2004) 18, GB4031, doi:10.1029/2004GB002247.
→海水のDICやアルカリ度などの炭酸系化学データや放射性炭素やCFCなどによる海水の年代を、全球で3次元マッピングして、格子状データベース化した。

Ocean acidification due to increasing atmospheric carbon dioxide
Raven J. et al.
The Royal Society, London (2005)
→英国王立協会がまとめた、人為起源CO2による海洋酸性化に関する報告書。

2009年11月9日月曜日

新しい論文(091102-091108)

☆Nature☆

Structural basis of inter-protein electron transfer for nitrite reduction in denitrification
Masaki Nojiri, Hiroyasu Koteishi, Takuya Nakagami, Kazuo Kobayashi, Tsuyoshi Inoue, Kazuya Yamaguchi & Shinnichiro Suzuki
Nature 462, 117-120 (5 November 2009) doi:10.1038/nature08507
→脱窒における亜硝酸還元代謝を担う酵素(CuNIR)とシトクロムcの電子移動複合体の高分解能結晶構造を明らかにした。
【最新論文(Nature, Science)】


☆Science☆

Shifts in Lake N:P Stoichiometry and Nutrient Limitation Driven by Atmospheric Nitrogen Deposition
James J. Elser, Tom Andersen, Jill S. Baron, Ann-Kristin Bergstrom, Mats Jansson, Marcia Kyle, Koren R. Nydick, Laura Steger, and Dag O. Hessen
Science 6 November 2009: Vol. 326. no. 5954, pp. 835 - 837, DOI: 10.1126/science.1176199
→大気からの窒素降下(化石燃料燃焼や人口肥料使用が由来)が、湖の栄養化学量論を変化させ(窒素制限→リン制限)、湖生態系に影響しているらしい。つまり、人間活動が直接は及ばないような湖でも、沿革的に影響を受けてしまう。
【最新論文(Nature, Science)】

Abiotic Gas Formation Drives Nitrogen Loss from a Desert Ecosystem
Carmody K. McCalley and Jed P. Sparks
Science 6 November 2009: Vol. 326. no. 5954, pp. 837 - 840, DOI: 10.1126/science.1178984
→50℃以上になる砂漠表面では、窒素化合物が無機的に反応してガス化して失われているらしい(従来は微生物による代謝が主に行うとされた)。地球温暖化の影響や、全球の窒素循環を考える上で重要。
【陸域生元素循環1】

High Diversity of the Viral Community from an Antarctic Lake
Alberto Lopez-Bueno, Javier Tamames, David Velazquez, Andres Moya, Antonio Quesada, and Antonio Alcami
Science 6 November 2009: Vol. 326. no. 5954, pp. 858 - 861, DOI: 10.1126/science.1179287
→南極の淡水湖に存在するウイルス群には、融氷時に顕著な構成成分の変化がみられるらしい(ssDNAのウイルス優勢→dsDNAのウイルス優勢)。
【最新論文(Nature, Science)】

Viral Glycosphingolipids Induce Lytic Infection and Cell Death in Marine Phytoplankton
Assaf Vardi, Benjamin A. S. Van Mooy, Helen F. Fredricks, Kimberly J. Popendorf, Justin E. Ossolinski, Liti Haramaty, and Kay D. Bidle
Science 6 November 2009: Vol. 326. no. 5954, pp. 861 - 865, DOI: 10.1126/science.1177322
→海洋性ウイルスは、膜成分であるスフィンゴ糖脂質の生合成をコード化しており、このシグナル伝達経路によって、地球の炭素循環に大きな影響を及ぼす円石藻(Emiliania huxleyi)への感染、細胞死、ひいては集団消滅を制御しているらしい。「ウイルス(感染)のバイオマーカー」やっぱりあったか…。うーん、密かに狙っていただけに残念…。これから流行りそうだ。
【ウイルス1】


☆Geology☆

A possible link between the geomagnetic field and catastrophic climate at the Paleocene-Eocene thermal maximum
Youn Soo Lee and Kazuto Kodama
Geology November 2009, v. 37, p. 1047-1050, doi:10.1130/G30190A.1
→暁新世-始新世温暖極相期(PETM)の時の古地磁気記録を高解像度で調べると、53kyrにわたって地磁気の逆転があった。地磁気(地球核ダイナモ)と表層環境にリンク? 地球の自転速度が変わった?
【最新論文(地球科学系)】

Extraterrestrial demise of banded iron formations 1.85 billion years ago
John F. Slack and William F. Cannon
Geology November 2009, v. 37, p. 1011-1014, doi:10.1130/G30259A.1
→縞状鉄鉱床(BIFs)が1.85Gaに見られなくなるのは、当時に地球外物質衝突(Sudbury衝突)によって、海水がかき混ぜられて、全体的にsuboxicになったから?
【最新論文(地球科学系)】


☆EOS☆

The Terrestrial Cosmic Ray Flux: Its Importance for Climate
Ram M, M. R. Stolz and B. A. Tinsley
Eos, Vol. 90, No. 44, 3 November 2009, 397-398
→太陽活動周期による宇宙線飛来量変動が気候に影響しているという話。GISP2のダスト量変動に太陽周期(22年など)が見られるらしい。大気~地面の電流が宇宙線の影響を受けるというメカニズム説。
【太陽と気候2】


☆Geochimica et Cosmochimica Acta☆

Elevated Concentrations of Formate, Acetate and Dissolved Organic Carbon Found at the Lost City Hydrothermal Field
Susan Q. Lang, David A. Butterfield, Mitch Schulte, Deborah S. Kelley and Marvin D. Lilley
Geochimica et Cosmochimica Acta, Available online 1 November 2009, doi:10.1016/j.gca.2009.10.045
→Lost City熱水噴出孔で、蟻酸・酢酸などの溶存有機物がわりと高濃度で見られる。蟻酸は、カンラン石の熱水変質に伴い、非生物的に合成されたものらしい。こうした高アルカリ性環境での生命にとって重要かも。
【熱水系1】

科学ニュース(091102-091108)

Past Climate Of Northern Antarctic Peninsular Informs Global Warming Debate
ScienceDaily (Nov. 6, 2009)
→南極半島北部で、過去1万4千年分の堆積物コアから気候復元。過去50年で3℃温暖化したらしい。Geological Society of America Bulletinに論文。

Lightning's 'NOx-ious' Impact On Pollution, Climate
ScienceDaily (Nov. 6, 2009)
→雷による窒素酸化物(NOx)生成への寄与率は、従来10%ぐらいと考えられてきたが、実際はもっと大きく、重要かもしれない。中緯度~亜熱帯での観測によると、雷1回で平均7kgのNOxが生成されるらしい。Journal of Geophysical Researchに論文。

March Geoengineering Confab Draws Praise, Criticism
Science Incider, November 6, 2009
→硫酸を成層圏にまいたり、鉄を海にまいたりして、地球温暖化を抑制しようという「地球工学」の是非を問う会議が来年3月に開催されるが、地球工学企業とのつながりに対して、利益相反の批判も。

The $4400 Genome
ScienceNOW Daily News (Nov. 6, 2009)
→ついに40万円でヒトゲノムが読めるようになったらしい。従来より一桁安い。じきに1日ほどで読めるようになるらしい。これはすごい。Science電子版に論文。

Abiotic Synthesis Of Methane: New Evidence Supports 19th-Century Idea On Formation Of Oil And Gas
ScienceDaily (Nov. 6, 2009)
→地球深部の温度圧力条件をダイヤモンドアンビルセルで再現して実験すると、メタンが非生物的に生成したらしい。石油無機起源説を支持? Energy & Fuelに論文。

Airborne Nitrogen Shifts Aquatic Nutrient Limitation In Pristine Lakes
ScienceDaily (Nov. 5, 2009)
→大気からの窒素降下(化石燃料燃焼や人口肥料使用が由来)が、湖の栄養化学量論を変化させ(窒素制限→リン制限)、湖生態系に影響しているらしい。リン制限な植物プランクトンは、動物にとって”ジャンクフード”らしいので。Scienceに論文。

Earthquakes Actually Aftershocks Of 19th Century Quakes; Repercussions Of 1811 And 1812 New Madrid Quakes Continue To Be Felt
ScienceDaily (Nov. 5, 2009)
Earth science: Lasting earthquake legacy
Nature News & Views (Nov. 5, 2009)
Aftershocks can last for centuries
Nature News (Nov. 4, 2009)
→プレート内部での最近の地震の多くは、数百年前に起きた大地震の余震らしい。したがって、定常状態の地震活動として大陸の地震を取り扱う一般的な方法は、現在地震活動が活発な地域の災害を過大評価し、それ以外の地域では過小評価していることになる。 Natureに論文。

Newly Drilled Ice Cores May Be The Longest Taken From The Andes
ScienceDaily (Nov. 4, 2009)
→オハイオ州立大学のグループが、アンデスで5364mのアイスコアを掘削。かなり大量の昆虫・植物が氷中に含まれているらしい。温暖化の影響で、氷河が融け始めているので、この地点でのアイスコア掘削は最後のチャンス?

Mapping Nutrient Distributions Over The Atlantic Ocean
ScienceDaily (Nov. 3, 2009)
→溶存有機窒素と溶存有機リンの分布が、初めて大西洋で系統的にマッピングされた。表層100mの栄養の75%は溶存有機物らしい。また、北大西洋の方が濃度が薄い。Global Biogeochemical Cyclesに論文。

Origin Of Cosmic Rays: VERITAS Telescopes Help Solve 100-year-old Mystery
ScienceDaily (Nov. 3, 2009)
→VERITAS望遠鏡によるガンマ線観測から、宇宙線が光速近くにまで加速されている機構(100年来の謎)が分かった。超新星爆発や星間風らしい。超新星爆発が多数集まるM82星雲を観測すると、そこから宇宙線が多く放射されているらしい。Nature電子版に論文。

Deep-sea Ecosystems Affected By Climate Change
ScienceDaily (Nov. 3, 2009)
→深海の動物生態系は、気候変動に様々なかたちで影響されているらしい。表層からの有機物供給が、風による湧昇、混合層深度、ダスト輸送などの変化によって、大きく変化するとか。例えばある種の魚は、15年間で数が倍増。PNASに論文。

'Ultra-primitive' Particles Found In Comet Dust
ScienceDaily (Nov. 2, 2009)
→地球上層大気で、太陽系形成以前に作られた、非常に古い粒子(presolar grain)が採取された。2003年の彗星によってもたらされたらしい。Earth and Planetary Science Lettersに論文。

2009年11月2日月曜日

科学ニュース(091026-091101)

Did Ancient Earth Go Nuclear?
ScienceNOW Daily News, 29 October 2009
→GOEぐらいで大気酸素濃度が上昇した結果、ウランが可溶性になって海水に溶けだし、沿岸とかに蓄積して、自然に核反応が生じたという仮説の提唱。生物進化にも影響? GSA Todayに論文。

Aerosols make methane more potent
Nature News, 29 October 2009
Atmospheric Science: Clean the Air, Heat the Planet?
Science Perspectives, 30 October 2009
Interactions With Aerosols Boost Warming Potential Of Some Gases
ScienceDaily (Oct. 31, 2009)
→エアロゾルとメタンを一緒に考えて計算すると、メタンの温室効果は従来予想より大きくなった。Scienceに論文。

Volcanoes Played Pivotal Role In Ancient Ice Age, Mass Extinction ScienceDaily (Oct. 26, 2009)
→4億5000万年前のオルドビス紀の氷河期は、火山のせい? Geologyに論文。

Ancient 'Monster' Insect: 'Unicorn' Fly Never Before Observed
ScienceDaily (Oct. 26, 2009)
→1億年前のコハクの中に、“ユニコーン”バエを発見。Cretaceous Researchに論文。

New Wrinkle In Ancient Ocean Chemistry
ScienceDaily (Oct. 30, 2009)
→従来の予想より7億年も早く、25億年前には硫化水素に富んだ海水が形成されていた。極微量の酸素が光合成で生成され、大陸の風化を促進したためらしい。Scienceに論文。

新しい論文(091026-091101)

☆Nature☆

Volatile accretion history of the terrestrial planets and dynamic implications
Francis Albarède
Nature 461, 1227-1233 (29 October 2009) doi:10.1038/nature08477
→「地球型惑星は基本的に乾燥しており、水を含んだ物質の集積を通して初めて揮発性元素を獲得した」という仮説に対する証拠の検討。
【最新論文(Nature, Science)】


☆Science☆

A Late Archean Sulfidic Sea Stimulated by Early Oxidative Weathering of the Continents
Christopher T. Reinhard, Rob Raiswell, Clint Scott, Ariel D. Anbar, and Timothy W. Lyons
Science 30 October 2009: Vol. 326. no. 5953, pp. 713 – 716, DOI: 10.1126/science.1176711
→従来の予想より7億年も早く、25億年前には硫化水素に富んだ海水が形成されていた。極微量の酸素(硫黄のMIFは残る程度)が光合成で生成され、大陸の風化を促進したためらしい。
【先カンブリア紀2】

Improved Attribution of Climate Forcing to Emissions
Drew T. Shindell, Greg Faluvegi, Dorothy M. Koch, Gavin A. Schmidt, Nadine Unger, and Susanne E. Bauer
Science 30 October 2009: Vol. 326. no. 5953, pp. 716 – 718, DOI: 10.1126/science.1174760
→メタン-オゾン-エアロゾル相互作用を考慮に入れて計算すると、メタンの温室効果は、京都議定書で採用された従来予想よりも大きく出た。
【最新論文(Nature, Science)】


☆Nature Geoscience☆

Large-scale distribution of Atlantic nitrogen fixation controlled by iron availability
C. Mark Moore, Matthew M. Mills, Eric P. Achterberg, Richard J. Geider, Julie LaRoche, Mike I. Lucas, Elaine L. McDonagh, Xi Pan, Alex J. Poulton, Micha J. A. Rijkenberg, David J. Suggett, Simon J. Ussher & E. Malcolm S. Woodward
Nature Geoscience, Published online: 01 November 2009 doi:10.1038/ngeo667
→大西洋を南北にトランセクトで窒素固定速度や栄養塩濃度を調べると、北大西洋の方が南大西洋よりも窒素固定速度が高く、鉄イオン濃度と正相関。鉄の供給が、窒素固定の制限要因になっているらしい。
【海洋生元素循環3】


☆Environmental Microbiology☆

Metagenome and mRNA expression analyses of anaerobic methanotrophic archaea of the ANME-1 group
Anke Meyerdierks, Michael Kube, Ivaylo Kostadinov Hanno Teeling Frank Oliver Glöckner Richard Reinhardt & Amann, Rudolf
Environmental Microbiology, Published Online: 29 Oct 2009, DOI:10.1111/j.1462-2920.2009.02083.x
→ANME(嫌気的メタン酸化アーキア)-1のメタゲノム解析、mRNA発現解析。
【地下生物圏2】

Biomass production and energy source of thermophiles in a Japanese alkaline geothermal pool
Hiroyuki Kimura, Kousuke Mori, Hiroaki Nashimoto, Shohei Hattori, Keita Yamada, Keisuke Koba, Naohiro Yoshida, Kenji Kato
Environmental Microbiology, Published Online: Oct 29 2009, DOI: 10.1111/j.1462-2920.2009.02089.x
→長野県の85℃の温泉で、好熱微生物の生態学とガス同位体地球化学。水素ガスを酸化してエネルギー源にするバクテリアがたくさんいるらしい。
【熱水系1】

Roles of viruses in the environment
Forest Rohwer, David Prangishvili, Debbie Lindell
Environmental Microbiology, Published Online: Oct 27 2009, DOI: 10.1111/j.1462-2920.2009.02101.x
→Environmental Microbiologyの2009年11月号の“環境中ウイルス”特集号の序言。15本の論文が続く。
【ウイルス1】