2009年10月26日月曜日

新しい論文(091019-091025)

☆Nature☆

Atmospheric carbon dioxide through the Eocene–Oligocene climate transition
Paul N. Pearson, Gavin L. Foster & Bridget S. Wade
Nature 461, 1110-1113 (22 October 2009) doi:10.1038/nature08447
→タンザニアの地層の炭酸塩微化石のホウ素同位体組成から、始新世-漸新世境界における大気中二酸化炭素濃度の変化を復元。この時期の南極氷床の発達における、大気中二酸化炭素濃度の低下の重要性を示したらしい。
【最新論文(Nature, Science)】


☆Science☆

Smallest Algae Thrive As the Arctic Ocean Freshens
William K. W. Li, Fiona A. McLaughlin, Connie Lovejoy, and Eddy C. Carmack
Science 23 October 2009: Vol. 326. no. 5952, p. 539, DOI: 10.1126/science.1179798
→北極海において、植物プランクトンの細胞の大きさは、温度上昇と海表面の塩分濃度の減少に対して、小形化して適応してきた。食物連鎖の餌が減る?
【最新論文(Nature, Science)】

Detection of Adsorbed Water and Hydroxyl on the Moon
Roger N. Clark
Science 23 October 2009: Vol. 326. no. 5952, pp. 562 - 564, DOI: 10.1126/science.1178105
Temporal and Spatial Variability of Lunar Hydration As Observed by the Deep Impact Spacecraft
Jessica M. Sunshine, Tony L. Farnham, Lori M. Feaga, Olivier Groussin, Frederic Merlin, Ralph E. Milliken, and Michael F. A’Hearn
Science 23 October 2009: Vol. 326. no. 5952, pp. 565 - 568, DOI: 10.1126/science.1179788
Character and Spatial Distribution of OH/H2O on the Surface of the Moon Seen by M3 on Chandrayaan-1
C. M. Pieters, J. N. Goswami, R. N. Clark, M. Annadurai, J. Boardman, B. Buratti, J.-P. Combe, M. D. Dyar, R. Green, J. W. Head, C. Hibbitts, M. Hicks, P. Isaacson, R. Klima, G. Kramer, S. Kumar, E. Livo, S. Lundeen, E. Malaret, T. McCord, J. Mustard, J. Nettles, N. Petro, C. Runyon, M. Staid, J. Sunshine, L. A. Taylor, S. Tompkins, and P. Varanasi
Science 23 October 2009: Vol. 326. no. 5952, pp. 568 - 572, DOI: 10.1126/science.1178658
→探査機カッシーニ、ディープインパクト、チャンドラヤーン1号の観測によってそれぞれ、月表面の土壌中に水酸基の形で水が極微量ながら含まれていることが分かった。
【最新論文(Nature, Science)】

Metagenome of a Versatile Chemolithoautotroph from Expanding Oceanic Dead Zones
David A. Walsh, Elena Zaikova, Charles G. Howes, Young C. Song, Jody J. Wright, Susannah G. Tringe, Philippe D. Tortell, and Steven J. Hallam
Science 23 October 2009: Vol. 326. no. 5952, pp. 578 - 582, DOI: 10.1126/science.1175309
→海洋の酸素極小層(OMZ)に棲んでいる、化学合成独立栄養微生物のメタゲノム解析。様々な酸化還元代謝の遺伝子あり。
【海洋生元素循環3】


☆Geophysical Research Letters☆

Significant contribution of dissolved organic matter to seawater alkalinity
Hyun-Cheol Kim and Kitack Lee
Geophys. Res. Lett., 36, L20603, doi:10.1029/2009GL040271.
→海洋中の溶存有機物(DOM)が、海水のアルカリ度に大きく寄与していることが、初めて示された。植物プランクトンが光合成をするときに放出する有機物が、H+と反応するらしい。海洋研のセミナーの論文紹介は、これにしようかな。
【海洋生元素循環3】


☆Global Biogeochemical Cycles☆

Rapid oxygen utilization in the ocean twilight zone assessed with the cosmogenic isotope 7Be
Kadko, D.
Global Biogeochem. Cycles, 23, GB4010, doi:10.1029/2009GB003510.
→宇宙線生成放射性核種7Be(半減期53.3日)を用いて、海洋水深200mまでの酸素消費量を見積もると、65%のPOCが無機化されているらしいことが分かった。浅海での堆積物トラップからの見積もり値よりも、大きな値らしい。
【最新論文(地球科学系)】


☆The ISME Journal☆

Systematic artifacts in metagenomes from complex microbial communities
Vicente Gomez-Alvarez, Tracy K Teal and Thomas M Schmidt
ISME J 3: 1314-1317; advance online publication, July 9, 2009; doi:10.1038/ismej.2009.72
→454を用いたメタゲノム解析に、系統的な見かけのシグナルが出てくることが分かった。11-35%は、見かけのシグナルらしい。補正はできるらしい。
【最新論文(生物系)】


☆Analytical Chemistry☆

Dual Labeling of Metabolites for Metabolome Analysis (DLEMMA): A New Approach for the Identification and Relative Quantification of Metabolites by Means of Dual Isotope Labeling and Liquid Chromatography−Mass Spectrometry
Liron Feldberg, Ilya Venger, Sergey Malitsky, Ilana Rogachev and Asaph Aharoni
Anal. Chem., Publication Date (Web): October 21, 2009, DOI: 10.1021/ac901495a
→水素と窒素など、2元素のラベル化合物を使った、微量代謝物の定量法。ESIにおけるマトリックス効果を考えなくてよくなるらしい。
【メタボロミクス1】


☆Rapid Communications in Mass Spectrometry☆

Nicotine, acetanilide and urea multi-level 2H-, 13C- and 15N-abundance reference materials for continuous-flow isotope ratio mass spectrometry
Arndt Schimmelmann, Andrea Albertino, Peter E. Sauer, Haiping Qi, Roland Molinie, François Mesnard
Rapid Communications in Mass Spectrometry, Published Online: 20 Oct 2009, DOI:10.1002/rcm.4277
→有機物の水素・炭素・窒素同位体組成をGC/C/IRMSやEA/IRMSを測定する際には標準物質が必要だが、幅広い同位体の値を持った標準物質はこれまでなかった。今回、ニコチン、アセトアニリド、尿素が良い標準物質となることを示した。
【最新論文(化学系)】

科学ニュース(091019-091025)

Arctic Sediments Show That 20th Century Warming Is Unlike Natural Variation
ScienceDaily (Oct. 25, 2009)
→北極の湖底堆積物から、過去20万年間の気候を復元し、20世紀の地球温暖化は自然の変動ではなさそうなことを示した。これまでは過去1万年間がせいぜいだったので、記録長を大きく伸ばしたことになる。PNASに論文。

5億9000万年前の胚:左右相称動物の起源
Wired Science, 2009年10月22日
→5億9000万年前のドウシャンツオの胚化石をシンクロトロン放射マイクロ・トモグラフィーで3次元撮像したところ、左右相称動物の特徴を備えていた。カンブリア大爆発からさらに4000万年さかのぼることになる。PNASに論文。

Astronomers Find Organic Molecules Around Gas Planet
ScienceDaily (Oct. 21, 2009)
→ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡で、系外惑星HD 209458bを観測したところ、大気に水・メタン・二酸化炭素が含まれていた。2個目の発見らしい。ただしメタンは無生物的にも生成されるので、生物の証拠にはならない。

Geologists Point To Outer Space As Source Of The Earth's Mineral Riches
ScienceDaily (Oct. 19, 2009)
→地球形成初期のコア-マントル分化を、高温高圧実験で再現し、元素(オスミウム、イリジウム、金)の分配を調べたところ、岩石側にほとんど残らなかった。しかし現在の地球上の岩石にはこれらの元素は存在するので、つまり、分化後に隕石等で元素が供給されたことになるらしい。Nature Geoscience電子版に論文。

2009年10月24日土曜日

東京近郊の地球化学若手のセミナー

東京近郊の地球化学若手研究者が集まるセミナー(名称未定)の第1回を、11月1日に東大海洋研で開催します。興味のある方は、ぜひぜひご参加ください。

日時: 11月1日(日) 14:00-
場所: 東京大学海洋研究所 A棟1F大講義室
アクセス: http://www.ori.u-tokyo.ac.jp/about/j/map.html
(門正面の5階建ての建物(A棟)の、正面玄関から入って左奥の教室)


【プログラム】

14:00~14:30
セバスチアン・ダニエラチェ
東京工業大学大学院総合理工学研究科環境理工学創造専攻 PD
「Research in global change using stable isotope analysis, application to atmospheric sulfur」

14:30~15:00
佐々木 雄治
東京農工大学大学院農学府物質循環環境科学専攻 M2
「窒素・酸素安定同位体比を用いた木崎湖水中における窒素循環の解析」

15:00~15:15
黒岩 恵
東京農工大学農学部環境資源科学科 B4
「4地点の森林土壌における純硝化速度ならびにアンモニア酸化細菌群集構造解析」

<休憩>

15:30~16:00
山口 保彦
東京大学海洋研究所海洋底科学部門 M2
「樹木年輪の放射性炭素濃度、酸素同位体組成から探る太陽活動・宇宙線・気候の関係」

16:00~16:30
山田 健太郎
東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻 D1
「南中国のエディアカラ紀/カンブリア紀境界層から得られた長鎖n-アルカンの起源」

16:30~16:45
総合討論

<休憩>

17:00~
ポスター発表&懇親会

池田 昌之
東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻 D1
「美濃帯犬山地域中部三畳系層状チャートの堆積リズムにみられたミランコビッチサイクルと陸域の湿潤乾燥サイクル:メガモンスーン仮説」

石田 都士磨
明治大学農学部農学科 B4
「Bruce & Klute法を用いたvan Genuchten型不飽和透水係数の評価」

内藤 裕一
東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻 D1
「アミノ酸の窒素同位体比による古人骨の海産物摂取量評価」

服部 祥平
東京工業大学大学院総合理工学研究科環境理工学創造専攻 M2
「硫化カルボニルの硫黄同位体比測定への挑戦 -成層圏硫酸エアロゾル生成過程の解明に向けて-」

三浦 亜由美
立正大学大学院地球環境科学研究科 M1
「南極ドームFuji切削氷中の宇宙塵」

吉崎 もと子
東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻 M2
「300℃、500気圧におけるコマチアイトの熱水変質実験」

2009年10月19日月曜日

新しい論文(091012-091018)

☆Nature☆

Extensive dynamic thinning on the margins of the Greenland and Antarctic ice sheets
Hamish D. Pritchard, Robert J. Arthern, David G. Vaughan & Laura A. Edwards
Nature 461, 971-975 (15 October 2009) doi:10.1038/nature08471
→人工衛星からのレーザー観測によると、グリーンランドと南極の氷床は融けてきているらしい。
【最新論文(Nature, Science)】

Ammonia oxidation kinetics determine niche separation of nitrifying Archaea and Bacteria
Willm Martens-Habbena, Paul M. Berube, Hidetoshi Urakawa, Jos R. de la Torre & David A. Stahl
Nature 461, 976-979 (15 October 2009) doi:10.1038/nature08465
→アンモニア酸化アーキアは、10nmolとかごく薄いアンモニアでも使えるので、深海でも生きていけるらしい。海洋表層でも、植物プランクトンとのアンモニア獲得競争に勝てるらしい。
【海洋生元素循環3】


☆Science☆

Tyrannosaurid Skeletal Design First Evolved at Small Body Size
Paul C. Sereno, Lin Tan, Stephen L. Brusatte, Henry J. Kriegstein, Xijin Zhao, and Karen Cloward
Science 16 October 2009: Vol. 326. no. 5951, pp. 418 - 422, DOI: 10.1126/science.1177428
→恐竜ティラノサウルスの祖先は小型(体重比で約100分の1)だった。へー。
【最新論文(Nature, Science)】

Deep-Sea Archaea Fix and Share Nitrogen in Methane-Consuming Microbial Consortia
Anne E. Dekas, Rachel S. Poretsky, and Victoria J. Orphan
Science 16 October 2009: Vol. 326. no. 5951, pp. 422 - 426, DOI: 10.1126/science.1178223
→嫌気的メタン酸化アーキアと硫酸還元バクテリアのコンソーシアムをFISH-SIMSで分析すると、窒素固定を行っていることが分かった。窒素固定は意外と少ないエネルギーでも可能なようだ。炭素、窒素、硫黄の循環が直で結合しているという意味でも非常に重要。去年のAGUで発表され、話題になっていた。
【地下生物圏2】


☆Nature Geoscience☆

Generation of banded iron formations by internal dynamics and leaching of oceanic crust
Yifeng Wang, Huifang Xu, Enrique Merino & Hiromi Konishi
Nature Geoscience, Published online: 11 October 2009, doi:10.1038/ngeo652
→縞状鉄鉱床(BIFs)が縞々になっているのは、外部強制力が原因ではなく、海洋底熱水活動の内部ダイナミクスが原因という話。1.7Gaごろを境にBIFsが形成されなくなったのは、海洋地殻の組成が変化したためらしい。
【先カンブリア紀2】


☆Geobiology☆

Not so old Archaea – the antiquity of biogeochemical processes in the archaeal domain of life
CARRINE E. BLANK
Geobiology, Published Online: 15 Oct 2009, DOI:10.1111/j.1472-4669.2009.00219.x
→アーキアの分子時計を解析したところ、Euryarchaeotaなどのグループや、様々な代謝機能は、後期原生代~顕生代と比較的最近(大気酸素濃度が上昇した後)に進化したらしいことが分かった。
【先カンブリア紀2】


☆Marine Ecology Progress Series☆

Nitrogen and carbon isotope values of individual amino acids: a tool to study foraging ecology of penguins in the Southern Ocean
Anne Lorrain, Brittany Graham, Frédéric Ménard, Brian Popp, Steven Bouillon, Peter van Breugel, Yves Cherel
Mar Ecol Prog Ser 391:293-306, doi:10.3354/meps08215
→南大洋のペンギンのアミノ酸の窒素同位体組成(by TFA誘導体化)、炭素同位体組成分析(by HPLC-IRMS)を分析。窒素はTL決定に有用だが、炭素からは特別な情報は得られなかったらしい。
【アミノ酸分析法2】

科学ニュース(091012-091018)

Becoming T. rex
Science Perspectives, 16 October 2009
→恐竜ティラノサウルスの祖先(白亜紀前期)は小型(体重比で約100分の1)だった。Scienceに論文。

Fantastic Fixers
Science Perspectives, 16 October 2009
Chemical Imaging Of Deep-sea Microorganisms May Help Explain Lingering Nitrogen Mystery
ScienceDaily (Oct. 17, 2009)
→嫌気的メタン酸化アーキアと硫酸還元バクテリアのコンソーシアムをFISH-SIMSで分析すると、窒素固定を行っていることが分かった。Scienceに論文。

最先端研究プログラムさらに500億円減額
Science Portal, 2009年10月16日
文部科学省補正見直しでは、関係ありそうなところは他にも「来年度以降の若手研究者海外派遣事業」「海洋資源探査技術の開発体制の整備」などが、執行停止。「海洋資源~」は、JAMSTECのプログラムだから、周りにも影響ありそう。

来年度科研費、二種目の新規募集課題の公募を停止
スラッシュドット・ジャパン, 2009年10月16日
→「新学術領域研究 (研究課題提案型)」と「若手研究(S)」の新規募集課題の公募を停止。最先端研究開発支援プログラムの代償か? 特に若手Sは「500億円を若手・女性研究者に分配」の代わりの停止に思えてしまう。今年限りの停止なのか、それとも来年度以降も停止が続くのか…?

Giant Impact Near India -- Not Mexico -- May Have Doomed Dinosaurs
ScienceDaily (Oct. 15, 2009)
→インドにある直径40kmの巨大クレーター(本当なら地球最大)を作った隕石衝突が、6500万年前に恐竜を滅ぼしたのかもしれない。今年にクレーター中央を掘削して、衝撃で形成される鉱物など、隕石衝突の証拠を探すらしい。GSAで発表。

Ocean science goes deep
Nature News, 14 October 2009
→アメリカの深海底観測ネットワーク(OOI)の話。5年半の総工費が3.85億ドルで、維持管理費が年o.3-0.5億ドルの巨大プロジェクト。日本のDONETみたいな感じか。

Vote Likely on $172 Million Cut From NOAA Budget
Science Incider, October 13, 2009
→NOAA(アメリカ海洋大気局)の予算が、1.72億ドル削減されそうらしい。あまり人ごとじゃないぞ。。。

North America comet theory questioned
Natue News, 12 October 2009
→「ヤンガードライアスの原因は、北アメリカに彗星が衝突したから」という学説を否定する論文が、PNASに掲載。

Banded Rocks Reveal Early Earth Conditions, Changes
ScienceDaily (Oct. 12, 2009)
→縞状鉄鉱床(BIFs)の形成は、海洋底熱水活動のダイナミクスが原因らしい。岩石圏→水圏→大気圏→生物圏と影響が連鎖していた? Nature Geoscience電子版に論文。

2009年10月13日火曜日

科学ニュース(091005-091011)

小宮山宏・前東大総長「国家戦略室」政策参与就任か
Science Portal, 2009年10月9日
→科学技術政策の充実を期待。いずれは、有馬さんみたいに大臣職に就いたりするんだろうか?

Nitrogen Deposition Limits Climate Change Impacts On Carbon Sequestration
ScienceDaily (Oct. 8, 2009)
→二酸化炭素濃度が増加するとその分、森林が成長して二酸化炭素を吸収してくれると考えられているが、窒素など栄養塩の制限が効いて、吸収量増加はそこまで多くないらしい。Forest Ecology and Managementに論文。

Last Time Carbon Dioxide Levels Were This High: 15 Million Years Ago, Scientists Report
ScienceDaily (Oct. 9, 2009)
→有孔虫のB/Ca比から、過去2000万年間の二酸化炭素濃度を復元。最近80万年分は、氷床コアのデータをうまく再現できるらしい。現在と同じ二酸化炭素濃度は、1500万年前の中期中新世まで遡らないと見られない。Science電子版に論文。

Environment: The disappearing nutrient
Nature News, Published online 7 October 2009
→肥料として重要なリン鉱石の枯渇が、間近に迫っているらしい。世界経済は今後、石油ベースからリンベースになると予測する人もいるらしい。石油などと違い、代替資源がないので、リサイクル技術が重要になる?

Rare Evidence Of Dinosaur Cannibalism: Meat-Eater Tooth Found In Gorgosaurus Jawbone
ScienceDaily (Oct. 6, 2009)
→肉食恐竜の骨に、肉食恐竜の歯が残っていた。同じ科の恐竜なら、共食いの証拠!? Lethaiaに論文。

One Planet, Two Parents?
ScienceNOW Daily News, 6 October 2009
→HD 80606bなる巨大ガス系外惑星の軌道は、二つの恒星の重力に影響を受けているらしい。Astrophysical Journalに論文。

Cosmic Ray Decreases Affect Atmospheric Aerosols And Clouds
ScienceDaily (Oct. 6, 2009)
→宇宙線飛来量が急減するForbush decreasesにおいて、低層雲の含む液体の水の量は、タイムラグを伴って最大7%減少。微小エアロゾル粒子も減少。GRLに論文(2ヶ月前のものだけど…)。

Acidic Clouds Nourish World's Oceans
ScienceDaily (Oct. 6, 2009)
→汚染された空気などで生じた酸性の雲・雨は、ダストの鉄を分解して、より生物が使いやすい形にするらしい。大気汚染が皮肉にも、海洋での二酸化炭素固定をより増やすことになる。Environmental Science & Technologyに論文。

新しい論文(091005-091011)

☆Nature☆

Early Palaeogene temperature evolution of the southwest Pacific Ocean
Peter K. Bijl, Stefan Schouten, Appy Sluijs, Gert-Jan Reichart, James C. Zachos & Henk Brinkhuis
Nature 461, 776-779 (8 October 2009) doi:10.1038/nature08399
→始新世初期(約56~53Ma)から始新世後期初期(約36 Myr前)までの、南西太平洋のSSTをTEX86(!)で復元。34℃から21℃まで徐々に低下したらしい。つまり亜赤道域と亜極域間のSSTの緯度勾配が、ほとんど無い状態から顕著に増加した。
【最新論文(Nature, Science)】


☆Science☆

Ice Age Terminations
Hai Cheng, R. Lawrence Edwards, Wallace S. Broecker, George H. Denton, Xinggong Kong, Yongjin Wang, Rong Zhang, and Xianfeng Wang
Science 9 October 2009: Vol. 326. no. 5950, pp. 248 – 252, DOI: 10.1126/science.1177840
→中国の石筍の酸素同位体組成の分析によると、過去40万年にわたるアジアモンスーンの変動は、北半球における夏の日射量の変動と相関していた。退氷期の原因らしい。それにしてもずいぶんと大きく出た論文タイトルだなぁ。。。
【最新論文(Nature, Science)】

Reactome Array: Forging a Link Between Metabolome and Genome
Ana Beloqui, Maria-Eugenia Guazzaroni, Florencio Pazos, Jose M. Vieites, Marta Godoy, Olga V. Golyshina, Tatyana N. Chernikova, Agnes Waliczek, Rafael Silva-Rocha, Yamal Al-ramahi, Violetta La Cono, Carmen Mendez, Jose A. Salas, Roberto Solano, Michail M. Yakimov, Kenneth N. Timmis, Peter N. Golyshin, and Manuel Ferrer
Science 9 October 2009: Vol. 326. no. 5950, pp. 252 – 257, DOI: 10.1126/science.1174094
→全生物の主な代謝経路を代表する1676種の代謝産物と色素をスライドガラス上で結合させたマイクロアレイ(リアクトームアレイ)により、試料中の代謝活動の包括的な分析を迅速に行うことができる手法の開発。
【メタボロミクス1】


☆Proceedings of the National Academy of Sciences☆

Anoxygenic photosynthesis modulated Proterozoic oxygen and sustained Earth's middle age
D. T. Johnston, F. Wolfe-Simon, A. Pearson, and A. H. Knoll
PNAS 2009 106:16925-16929; 2009, doi:10.1073/pnas.0909248106
→原生代の大気進化には、非酸素発生型光合成による一次生産が重要という話。
【先カンブリア紀2】

Photolysis of iron–siderophore chelates promotes bacterial–algal mutualism
Shady A. Amin, David H. Green, Mark C. Hart, Frithjof C. Küpper, William G. Sunda and Carl J. Carrano
PNAS October 6, 2009 vol. 106 no. 40 17071-17076, doi:10.1073/pnas.0905512106
→バクテリアは、光分解しやすい鉄シデロフォアを生産して、藻類による鉄吸収を促進している? 逆に藻類はバクテリアに有機物を供給するという、共生関係?
【最新論文(生物系)】


☆Chemical Geology☆

Sulfur cycling at the Mid-Atlantic Ridge: A multiple sulfur isotope approach
Marc Peters, Harald Strauss, James Farquhar, Charlotte Ockert, Benjamin Eickmann, Cristiane L. Jost
Chemical Geology (2009), Available online 5 October 2009, doi:10.1016/j.chemgeo.2009.09.016.
→H2Sのd34SとD33Sを組み合わせて、中央大西洋海嶺熱水噴出孔での硫黄循環を調べた。生物プロセスと非生物プロセスが区別できるらしい。
【最新論文(地球科学系)】


☆Geobiology☆

2-Methylhopanoids are maximally produced in akinetes of Nostoc punctiforme: geobiological implications
D. M. DOUGHTY, R. C. HUNTER, R. E. SUMMONS AND D. K. NEWMAN
Geobiology, Published Online: 7 Oct 2009, DOI:10.1111/j.1472-4669.2009.00217.x
→シアノバクテリア(Nostoc)で、シアノのバイオマーカーとされる2-methylhopanoidsがどこで生産されているかを調べた。Akineteという休眠細胞で最も多く生産されており、酸素発生光合成とは結び付けられない。
【トリテルペノイド1】


☆Environmental Microbiology☆

Characterization of marine isoprene-degrading communities
Laura Acuña Alvarez, Daniel A. Exton, Kenneth N. Timmis, David J. Suggett and Terry J. McGenity
Environmental Microbiology, Published Online: 5 Oct 2009, 10.1111/j.1462-2920.2009.02069.x.
→海洋でイソプレンを分解する微生物群集を、集積培養して454などで同定。藻類が出すイソプレンが、炭化水素分解微生物を養っているらしい。イソプレンの新たなシンクとして重要かも。
【最新論文(生物系)】


☆Analytical Chemistry☆

Compound-Specific d34S Analysis of Volatile Organics by Coupled GC/Multicollector-ICPMS
Alon Amrani, Alex L. Sessions and Jess F. Adkins
Anal. Chem., Publication Date (Web): October 6, 2009, DOI: 10.1021/ac9016538
→GC-MC-ICPMSによる有機物の化合物レベル硫黄同位体組成分析法がついに完成。50pmolで誤差0.2‰以下、6pmolでも誤差0.5‰以下。EA/IRMSとの比較で確度も大丈夫。線形性も大丈夫。これはすごい。
【分析機器1】

2009年10月6日火曜日

新しい論文(090928-091004)

☆Nature☆

Untangling aerosol effects on clouds and precipitation in a buffered system
Bjorn Stevens & Graham Feingold
Nature 461, 607-613 (1 October 2009) doi:10.1038/nature08281.
→エアロゾルの変化に対する雲と降水の応答を、緩衝するように働く過程が重要だというレビュー。
【最新論文(Nature, Science)】


☆Science☆

Nitrous Oxide (N2O): The Dominant Ozone-Depleting Substance Emitted in the 21st Century
A. R. Ravishankara, John S. Daniel, and Robert W. Portmann
Science 2 October 2009: Vol. 326. no. 5949, pp. 123 - 125, DOI: 10.1126/science.1176985.
→亜酸化窒素が、21世紀にはオゾン層破壊物質として重要らしい。
【最新論文(Nature, Science)】

Rapid Resurgence of Marine Productivity After the Cretaceous-Paleogene Mass Extinction
Julio Sepulveda, Jens E. Wendler, Roger E. Summons, and Kai-Uwe Hinrichs
Science 2 October 2009: Vol. 326. no. 5949, pp. 129 - 132, DOI: 10.1126/science.1176233.
→デンマークのK/T境界の地層で、炭素・窒素同位体や藻類ステラン、バクテリアホパンを分析。藻類一次生産が大きく減少したのは、隕石衝突から100年以下とかごく短い間で、すぐに回復したらしい。
【最新論文(Nature, Science)】

Identification of Carboniferous (320 Million Years Old) Class Ic Amber
P. Sargent Bray and Ken B. Anderson
Science 2 October 2009: Vol. 326. no. 5949, pp. 132 - 134, DOI: 10.1126/science.1177539.
→石炭紀(320Ma)の琥珀は、150Maに発生した被子植物の琥珀と類似成分で、裸子植物が既にその生合成代謝系を持っていたことを示す。


☆Geology☆

Chemical constitution of a Permian-Triassic disaster species
Mark A. Sephton, Henk Visscher, Cindy V. Looy, Alexander B. Verchovsky, and Jonathan S. Watson
Geology October 2009, v. 37, p. 875-878, doi:10.1130/G30096A.1
→P/T境界に多産するReduviasporonites有機微化石を化学分析・同位体分析すると、菌類起源なことが示唆された(やや怪しい)。樹木を食べていたらしい。キノコが世界を滅ぼした!?
【顕生代1】

Sulfate-reducing ammonium oxidation: A thermodynamically feasible metabolic pathway in subseafloor sediment
Heather N. Schrum, Arthur J. Spivack, Miriam Kastner and Steven D'Hondt
Geology October 2009, v. 37, p. 939-942, doi:10.1130/G30238A.1
→硫酸を還元してアンモニアを酸化する代謝が、海底下堆積物で起きていることを、熱力学的に示した。これは重要そうだ。。。
【地下生物圏2】


☆Geophysical Research Letters☆

Total solar irradiance during the Holocene
Steinhilber, F., J. Beer, and C. Fröhlich
Geophys. Res. Lett. (2009) 36, L19704, doi:10.1029/2009GL040142.
→完新世の太陽総放射変動を、氷床コア10Be記録から計算して復元。
【太陽と気候2】


☆Geochimica et Cosmochimica Acta☆

New insights into the origin of perylene in geological samples
Kliti Grice, Hong Lu, Pia Atahan, Muhammad Asif, Christian Hallmann, Paul Greenwood, Ercin Maslen, Svenja Tulipani, Kenneth Williford, John Dodson
Geochimica et Cosmochimica Acta (2009) 73 (21) 6531-6543, doi:10.1016/j.gca.2009.07.029
→堆積物・堆積岩に含まれるペリレンの起源について、炭素・水素同位体組成などから、木を分解する真菌のバイオマーカーだと推定している。24th IMOGで発表していた。
【最新論文(地球科学系)】


☆Organic Geochemistry☆

Structural diversity of diether lipids in carbonate chimneys at the Lost City Hydrothermal Field
Alexander S. Bradley, Helen Fredricks, Kai-Uwe Hinrichs, Roger E. Summons
Organic Geochemistry, Available online 27 September 2009, doi: 10.1016/j.orggeochem.2009.09.004
→Lost City熱水噴出孔でジエーテル脂質(主にMethanosarcinales由来)の構造多様性を調べた。糖脂質を主にして、リンを節約している?
【熱水系1】

Biomarker indicators for anaerobic oxidizers of methane in brackish-marine sediments with diffusive methane fluxes
A. Aquilina, N.J. Knab, K. Knittel, G. Kaur, A. Geissler, S.P. Kelly, H. Fossing, C.S. Boot, R.J. Parkes, R.A. Mills, A. Boetius, J.R. Lloyd, R.D. Pancost
Organic Geochemistry (2009), Available online 30 September 2009, doi:10.1016/j.orggeochem.2009.09.009
→メタンのフラックスがある大陸棚浅部堆積物で、ANMEとSRBのバイオマーカー分析。
【最新論文(地球科学系)】


☆Limnology and Oceanography☆

Viral control of bacterial growth efficiency in marine pelagic environments
Motegi, Chiaki, Toshi Nagata, Takeshi Miki, Markus G. Weinbauer, Louis Legendre, and Fereidoun Rassoulzadegan
Limnol. Oceanogr., 54(6), 2009, 1901-1910
→ウイルスが遠洋バクテリアの成長に与える影響を調べるため、北西地中海でリン添加実験。ウイルス重要らしい。炭素フローモデルも提案。
【ウイルス1】

Carbon isotope composition of fatty acids and sterols in the scleractinian coral Turbinaria reniformis: Effect of light and feeding
Treignier, C., I. Tolosa, R. Grover, S. Reynaud, and C. Ferrier-Pages
Limnol. Oceanogr., 54(6), 2009, 1933-1940
→サンゴの脂肪酸とステロールの炭素同位体組成への、光と食性の影響。DB-23を使っている。
【脂肪酸1】

Microbial food web structure affects bottom-up effects and elemental stoichiometry in periphyton assemblages
Anja Fitter and Helmut Hillebrand
Limnol. Oceanogr., 54(6), 2009, 2183-2200
→様々な食物網構造を持った実験系で、有機炭素・リン・光など環境条件を制御して、元素の流れを調べた。底性微生物食物網が重要らしい。
【最新論文(生物系)】


☆Environmental Microbiology☆

Widespread known and novel phosphonate utilization pathways in marine bacteria revealed by functional screening and metagenomic analyses
Asuncion Martinez, Gene W. Tyson and Edward F. DeLong
Environmental Microbiology, Published Online: 29 Sep 2009, DOI:10.1111/j.1462-2920.2009.02062.x
→C-P結合を持つ有機リンphosophonateを代謝する能力が海洋バクテリアにあるか、機能性遺伝子探索・メタゲノム解析で調べた。広範なバクテリアが代謝能を持ち、P-richな海域はもちろん、P-poorな海域でも重要な代謝かもしれない。
【最新論文(生物系)】


☆Geomicrobiology Journal☆

Bacterial and Archaeal DNA Extracted from Inoculated Experiments: Implication for the Optimization of DNA Extraction from Deep-Sea Basalts
Hongmei Wang and Katrina J. Edwards
Geomicrobiology Journal, 26 (7) October 2009, 463-469
→玄武岩からDNAを抽出する手法の検討。
【最新論文(生物系)】


☆Analytical Chemistry☆

Accurate Quantitative Isotopic 13C NMR Spectroscopy for the Determination of the Intramolecular Distribution of 13C in Glucose at Natural Abundance
Gilbert, Virginie Silvestre, Richard J. Robins and Grald S. Remaud
Anal. Chem., Publication Date (Web): September 30, 2009, DOI: 10.1021/ac901441g
→NMRで、グルコースの分子内炭素同位体組成を天然存在度レベルで分析する手法の開発。3,5,6-triacetyl-1,2-O-isopropylidene-α-d-glucofuranose (TAMAGF)に誘導体化するのがミソらしい。誤差0.8‰以下。すごい。。。
【糖分析法1】