2012年6月4日月曜日

特に気になった新着論文 2012年5月



5月は7本。海洋DON窒素同位体組成、DMS硫黄同位体組成、スーパーフレア、北太平洋環流域の好気的海底下生命圏、ジュラ紀メラニン色素、火星隕石有機物、紫外線照射による火星メタン生成。

Angela N. Knapp, Daniel M. Sigman, Adam B. Kustka, Sergio A. Sañudo-Wilhelmy, Douglas G. Capone
Marine Chemistry, Volumes 136–137, 20 June 2012, Pages 24–33. Available online 12 May 2012.
→海洋の低分子溶存態有機窒素(<1000Da)の窒素同位体組成を初めて測定。低分子+高分子が全体と合わないなど、分析に問題がある可能性もあるけれど、低分子DONが一貫して高分子DONより低い値の窒素同位体組成を示した。興味深い。低分子DONのソースは、高分子DONの分解か、懸濁体有機物の分解か? はたまた低分子と高分子でソースが全然違うのか?

Harry Oduro, Kathryn L. Van Alstyne, and James Farquhar
PNAS, Published online before print May 14, 2012, doi: 10.1073/pnas.1117691109
→エアロゾルのソースとして重要なDMSDMSPの四種硫黄同位体組成を、海藻や植物プランクトンから単離して分析。海水の硫酸よりもd34Sが低い値を示す。大気化学的な話はH君に任せるとして、個人的にはメチオニン代謝とのリンクが興味深い。メチオニンとシステインの硫黄同位体組成、何かに使えるだろうか?(そもそもまだちゃんと測れないけど)

Hiroyuki Maehara et al.
Nature (2012) doi:10.1038/nature11063, Published online 16 May 2012
83千個の太陽型恒星で120日間で365回のスーパーフレア(最大級の太陽フレアの100-1000倍の超巨大フレア)が発生していた。系外惑星探査衛星ケプラーのデータを解析。1000倍スーパーフレアは、平均すると5000年に1回の発生頻度らしい。ホットジュピターを持つことが必須条件とされていたけど、そうでもなさそう。となると、太陽でもスーパーフレアが今後起きる/過去に起きていたかも?

Hans Røy, Jens Kallmeyer, Rishi Ram Adhikari, Robert Pockalny, Bo Barker Jørgensen, Steven D'Hondt
Science 18 May 2012: Vol. 336 no. 6083 pp. 922-925, DOI: 10.1126/science.1219424
→北太平洋環流域の赤色粘土堆積物の酸素の深度プロファイル。「海底下30m8600万年前の堆積物中でも海底下生命圏による好気呼吸が起きている!」という論文、なのだけど。うーむ。

Keely Glass et al.
PNAS, Published online before print May 21, 2012, doi: 10.1073/pnas.1118448109
→ジュラ紀の頭足類化石から、メラニン色素を化学的に直接検出。素晴らしい。従来は器官の形状や微量金属など、間接的な方法でメラニン色素の存在を推定していた。アルカリ過酸化水素分解、熱分解GC、赤外分光、X線、固体NMRなどなど、多種多様な分析手法を駆使している。ToF-SIMSEocene魚の眼の化石にメラニン色素検出」という論文58日に出ていたけど、こちらの方がより年代が古いので採用。

A. Steele et al.
Science DOI: 10.1126/science.1220715, Published Online May 24 2012
→火星隕石11個をラマン分光イメージングすると、10個には非生物起源高分子有機炭素が検出されたらしい。多環式芳香族炭化水素も。マグマが結晶化するときに還元的炭素が沈着する? 炭素安定同位体組成は、約-20‰と地球生物起源有機物と似た値を示す。「鉱物の結晶内部に取り込まれている有機物はコンタミでなく火星起源」という論理は分かるけど、よく読むとバルク有機物の放射性炭素のデータ的には、地球有機物がそれなりにコンタミしている模様。「有機物の数十%は火星起源」と書いてあるけど、本当だろうか?

Frank Keppler et al.
Nature (2012) doi:10.1038/nature11203, Published online 30 May 2012
→マーチソン隕石に模擬火星表層環境で紫外線照射すると、けっこうな量のメタンが発生したらしい。火星最大の謎の一つである、大気中メタンの生成源として重要かも? 水素同位体組成は地球外物質的な高い値(+数百‰)を示すけれど、炭素安定同位体組成は-60~-30‰と地球生物起源メタンと似た値になってしまうらしいので、火星大気メタンの同位体組成を測定しても解釈には要注意とな。

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