2012年10月7日日曜日

特に気になった新着論文 2012年9月 New Papers (Sep. 2012)


9月は9本。真菌メタン生成、太古代有機硫黄同位体、18S rDNAの限界、2段階のマンガン還元代謝、珪藻ブルームと鉄と微生物、GDGT脂質レビュー、海洋N:P比と藻類多様性、UCYN-Aの共生相手、大気酸素分子clumped isotope。日付順。

Lenhart, K., Bunge, M., Ratering, S., Neu, T. R., Schüttmann, I., Greule, M., Kammann, C., et al. (2012)
Nature Communications, 3, 1046. doi:10.1038/ncomms2049. Published 04 September 2012.
→好気条件で培養した真菌がメタン生成したらしい。メタン生成アーキアが混入していないことは、FISHPCRなどで確認しているようだ。13Cラベル実験によると、メチオニン(!)の硫黄に結合しているメチル基が前駆体になっている可能性がある。にわかには信じがたい話だけど、もしこれが本当で、しかも環境中で量的にも重要だとしたら、生物地球化学の色んな話が変わってきそう。続報を待ちたい。炭素・水素同位体分別はどうなっているんだろう。

Bontognali, T. R. R., Sessions, A. L., Allwood, A. C., Fischer, W. W., Grotzinger, J. P., Summons, R. E., & Eiler, J. M. (2012)
PNAS. doi:10.1073/pnas.1207491109. Published online before print September 4, 2012.
→西オーストラリアの34.5億年前のストロマトライトの有機物(ケロジェン)の硫黄同位体組成(d34SD33S)を、SIMSで分析。D33Sは正の値を示し、d34Sは細かな空間スケールで数十‰もの変動を示した。微生物マットの硫黄代謝がマット間隙水の硫化水素の硫黄同位体組成を変え、それが有機物に取り込まれたという解釈を示している。が、一読した限りでは、いまいち納得できなかった。有機硫黄はもっと後の段階でも変わってしまいそうな気もするけど…?

Tang, C. Q., Leasi, F., Obertegger, U., Kieneke, A., Barraclough, T. G., & Fontaneto, D. (2012)
PNAS. doi:10.1073/pnas.1209160109. Published online before print September 17, 2012.
meiofauna1mm以下の微小な底生無脊椎動物)の生物多様性を調べる手法として、よく使われる18S rDNAは、形態分類よりも多様性を数分の1に過小評価してしまうらしい。COI (Cytochrome c oxidase subunit I mtDNA) を使うと、むしろ形態よりも解像度高く分かるのでオススメらしい。他の生物群ではどうなんだろう…?

Hui Lin, Nadia H. Szeinbaum, Thomas J. DiChristina, Martial Taillefert (2012)
Geochimica et Cosmochimica Acta, Available online 18 September 2012
→マンガンを還元して有機物を酸化する微生物代謝では、従来はMn (IV)Mn (II) の還元反応が一度に進むと考えられていたが、実際にはMn (IV)Mn (III)Mn (II) という二段階の反応になっている模様。しかも有機物を酸化して無機炭素を放出するのは後半のMn (III)Mn (II) 反応だけで、前半のMn (IV)Mn (III) 反応は、マンガンを溶解させて使いやすくするための反応らしい。海洋堆積物などでの有機物分解を考える上で重要。

Boyd, P. W., et al. (2012)
Geophys. Res. Lett., 39, L18601, doi:10.1029/2012GL053448. published 19 September 2012.
→遠洋珪藻ブルームでは、珪藻と微生物&微小植物プランクトンとの間の、溶存鉄をめぐる競争が重要らしい。2008年のニュージーランド沖の春季珪藻ブルームを観測したら、鉄制限によって終わったらしい。鉄をめぐる競争では、微生物はK戦略とr戦略の両方を用いる。従来のモデルでは固定した藻類Fe:C比を用いていたが、実際には同化Fe:C比が生物グループごとにダイナミックに変化する。

Stefan Schouten, Ellen C. Hopmans, Jaap S. Sinninghe Damsté
Organic Geochemistry, Available online 19 September 2012
→最近10年間で急速に研究が進んできた、GDGT (Glycerol dialkyl glycerol tetraether) 脂質の有機地球化学についてのレビュー。執筆者は、アーキアGDGTを使ったTEX86古水温計を2002年に提唱したNIOZの人たち。項目は、分析法、分子構造、生合成、微生物生態学的応用、古環境学的応用など。役立つ。

Thomas Weber & Curtis Deutsch
Nature 489, 419–422 (20 September 2012) doi:10.1038/nature11357
→海洋の栄養塩のN:P比(14.3)は、藻類の平均N:P比(Redfield比=16)にかなり近いけど、その制御要因は分かっていそうで実はよく分かっていなかった。生態系&生物地球化学を考慮したGCMを走らせると、「藻類N:P比の多様性」「異なるN:P比の海域が海洋循環で結合すること」の2点が重要らしいことが分かった。藻類N:P比一定のモデルだと、栄養塩N:P比がずっと低くなってしまう。南大洋を扱ったWeber & Deutsch (2010, Nature) の続きで全球版という感じか。藻類群集組成や海洋循環が現在とは違う時代にはどうだったんだろうというのが次に気になるところ。ふーむ。

Thompson, A. W., Foster, R. A., Krupke, A., Carter, B. J., Musat, N., Vaulot, D., Kuypers, M. M. M., Zehr, J. P. (2012)
Science, 337(6101), 1546–1550. doi:10.1126/science.1222700. 21 September 2012.
→謎の海洋単細胞窒素固定シアノバクテリアUCYN-Aに、ついに共生相手が見つかった。ゲノム中に光合成系IITCA回路、特定のアミノ酸生合成経路などを欠いていて、何かと共生して有機炭素を供給してもらっているのではないか?と以前から言われていた。海洋の炭素循環・窒素循環を考える上でかなり重要。しかもハプト藻。石灰質なり有機質なりの殻を持つハプト藻だと、古海洋学的にも面白くなる。オルガネラ進化のモデルケースとしても興味深い。

Yeung, L. Y., E. D. Young, and E. Schauble (2012)
J. Geophys. Res., doi:10.1029/2012JD017992, in press.
→対流圏大気の酸素分子のclumped isotope分析(希少同位体同士が結合した分子種:O2分子だと18O-18O17O-18O)。36Arが同重体で干渉するので、ArO2をガスクロで分離して分析。炭酸塩の13C-18O結合を用いた古温度計は最近研究が進んできたけど、ついに酸素分子。大気中の分布には、O(3P) + O2の同位体交換反応が重要らしい。アイスコア中の記録をたどると、過去の大気の循環とラジカル反応の変動を復元できるかも?

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