2013年5月11日土曜日

集めた論文の覚書 [クオラムセンシングと物質循環] Literature Review [Quorum sensing and biogeochemical cycles]


数年前から微生物間のシグナルのやり取りに興味を持ち始めて、そうしたプロセスが特に地球の物質循環に影響していると面白いなーと思って、ちょっとずつ勉強しています。今回はクオラムセンシング(Quorum Sensing)について、集めた論文をメモしておきます。

クオラムセンシングが海洋沈降有機物粒子の分解に影響?
Hmelo et al. (2011, Env Microbiol Rep) より引用

クオラムセンシングについては、例えば下記Websiteなどに分かりやすい解説が載っていますが、自分と同種の微生物の生息密度を感知して、それに応じて物質(細胞外加水分解酵素とか)の産生をコントロールする機構のことです。周りに仲間がたくさんいたら活動を頑張る、という微生物の戦略ですね。

物質循環との関係を論じた研究はまだ多くありませんが、特に医学系の微生物学分野などでクオラムセンシングはかなり研究されていて、レビューもたくさん書かれています(後半に目についたレビュー論文もメモ)。

今回は特にN-acyl-homoserine lactones (AHLs) という有機分子を用いたクオラムセンシングに着目しています。海洋環境だと、ウッズホール海洋研究所の人たちがここ数年精力的に研究している印象なので(2、3、5番の論文)、そのうち会って話してみたいところ。


DeAngelis, K.M., Lindow, S.E., Firestone, M.K., 2008.
FEMS Microbiology Ecology 66, 197–207.
→クオラムセンシングがプロテオバクテリアによる細胞外加水分解酵素の生成に重要で、土壌中の有機物無機化と窒素循環に重要らしい。

Hmelo, L.R., Van Mooy, B.A.S., 2009.
Aquatic Microbial Ecology 54, 127–133.
AHLsを介したクオラムセンシングが海洋環境中で働きうるかを調べるため、AHLsの海水中での分解速度を調べた。意外と遅いので、海洋環境中でもシグナル分子として働きうる。

Hmelo, L.R., Mincer, T.J., Van Mooy, B.A.S., 2011.
Environmental Microbiology Reports 3, 682–688.
2番の続き。海洋中の沈降有機物の加水分解に、バクテリアのクオラムセンシングが実際に影響している可能性。沈降有機物中のAHLsの検出と、AHLsを添加したインキュベーション実験。(個人的「この論文がすごい!」2011で年間第2位にした論文

Romero, M., Martin-Cuadrado, A.-B., Otero, A., 2012.
Applied and Environmental Microbiology 78, 6345–6348.
AHLsを分解してクオラムセンシングを妨害する働き(クオラムクエンチング)の酵素は、様々な海洋バクテリア培養株やメタゲノムデータに見られるらしい。

Van Mooy, B.A.S., Hmelo, L.R., Sofen, L.E., Campagna, S.R., May, A.L., Dyhrman, S.T., Heithoff, A., Webb, E. A., Momper, L., Mincer, T.J., 2012.
The ISME journal 6, 422–429.
→海洋窒素固定シアノバクテリア(Trichodesmium)が溶存有機リンを分解してリン酸塩を同化する代謝に、AHLsなどによるクオラムセンシングが効いているらしい。

Zhang, G., Zhang, F., Ding, G., Li, J., Guo, X., Zhu, J., Zhou, L., Cai, S., Liu, X., Luo, Y., Zhang, G., Shi, W., Dong, X., 2012.
The ISME Journal 6, 1336–1344.
→メタン生成アーキアでも、AHLsを介したクオラムセンシングが働いているらしい。バクテリアだけでなく原核生物全体で重要?


<クオラムセンシング一般のレビュー>

Miller, M.B., Bassler, B.L., 2001.
Annual Review of Microbiology 55, 165–199.

Waters, C.M., Bassler, B.L., 2005.
Annual Review of Cell and Developmental Biology 21, 319–46.

Keller, L., Surette, M.G., 2006.
Nature Reviews Microbiology 4, 249–258.

Steindler, L., Venturi, V., 2007.
FEMS Microbiology Letters 266, 1–9.

Jayaraman, A., Wood, T.K., 2008.
Annual Review of Biomedical Engineering 10, 145–67.

Von Bodman, S.B., Willey, J.M., Diggle, S.P., 2008.
Journal of Bacteriology 190, 4377–91.

Ng, W.-L., Bassler, B.L., 2009.
Annual Review of Genetics 43, 197–222.

Uroz, S., Dessaux, Y., Oger, P., 2009.
ChemBioChem 10, 205–216.

Dobretsov, S., Teplitski, M., Paul, V., 2009.
Biofouling 25, 413–427.

Decho, A.W., Norman, R.S., Visscher, P.T., 2010.
Trends in Microbiology 18, 73–80.

Decho, A.W., Frey, R.L., Ferry, J.L., 2011.
Chemical Reviews 111, 86–99.

Albuquerque, P., Casadevall, A., 2012.
Medical Mycology 50, 337–345.

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